フルーツではないほうの「キウイ」保護のために外来種駆除に力を入れるニュージーランドの話

 

 

「キウイ(kiwi)」と言えば私たち日本人にとってはキウイフルーツのことで、この鳥を思い浮かべることはほとんどないでしょう。

 

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しかしキウイフルーツはこの鳥に似ていることことから名づけられたもので、”順番” で言えば鳥のキウイが先ということになります。

 

キウイはニュージーランドに元来生息する固有種で、現在は「国鳥」として国のシンボルにされています。

 

ボルネオのオランウータン、インドネシアスマトラトラ、そして中国のパンダなどと同じく、その国ならではの動物という意味で地元の人たちにとっても重要な存在です。

 

しかし同時に、その生息数の激減が大きな問題となっている意味でも重要な存在で、オランウータンやスマトラトラ、パンダたちと同様の意義を持っています。

 

【キウイを取り巻く天敵たち】

キウイの主な天敵はオポッサムやオコジョ、ネズミなどです。

 

ニュージーランド国内にもうけられている保護区では、地元の人たちが日々パトロールを続け、キウイの生存を脅かす動物たちを見つけて駆除する対策に取り組んでいます。

 

キウイたちの保護区があるカピティ島には、本来であればそこに生息していない、すなわち「外来種」のオコジョたちが暮らしています。

 

オコジョは可愛らしい見た目をしていますが、自分の身体よりも大きい獲物を捕らえることができる肉食動物で、また木の破片などに乗っかって海を渡ることも確認されている、生存能力の高い動物です。

 

 

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またネズミは運搬船などに紛れ込んで海を渡ることがありますし、荷物などについてくるアルゼンチンアリは巣の中で暮らす子供のキウイに集団で襲い掛かることもあります。

 

このように、キウイを襲う可能性がある外来種たちを発見した場合、パトロールをしている人たちは毒の入ったエサでおびき寄せて殺し、キウイたちにとって安全な状態を保てるように努めています。

 

外来種の完全駆除を目指す政府】

2016年、ニュージーランド政府は2050年までに外来種を根絶する政策を決定しました。 その実現のためにはオポッサムやオコジョ、ネズミなどはすべて駆除されることになります。

 

また最近、ニュージーランド環境保護を担う省庁に、向こう10年間にかけて8千万ニュージーランドドル(約61兆円)が外来種駆除の費用として充てられることになりました。

 

完全駆除を達成するためには、ワナと毒入りのエサだけでなく、生化学や遺伝子操作など新技術の導入も検討されているそうです。

 

この政策については実現に向けて取り組む価値があるという見方がある一方、「実現不可能」とか「野心的」という懐疑的な意見も出ています。

 

事実、キウイ保護ということに関して言えば、この外来種根絶策は必ずしも十分であるとはいえないのです。

 

【家庭のペットも天敵】

実はキウイたちは上記のような外来種のオコジョなどに襲われるだけでなく、ペットとして飼われている犬や猫に襲われる場合も多い、ということが判明しています(ニュージーランドOECD加盟国の中で最もペット保有率の高い国のひとつです)。

 

こうした現状に対しては、犬に電気ショックを与えてキウイを追いかけないように覚え込ませる、というプログラムが用意されているそうです。

 

また猫の飼い主の間では、夜行性のキウイが襲われないように夜は猫を屋外に出さないようにするという運動も広まっています。

 

【本当の原因も忘れない】

こうした対策はキウイ保護の観点からはすべて正当化されることで、遠くない将来には効果を発揮し、キウイの生息数が回復してくれることを願うばかりです。

 

しかし、その原因のほとんどが人の活動によるものであるということも思い出しておきたいものです。

 

上記のオコジョのように自分で海を渡ってくる動物もありますが、通常外来種の多くは人の活動によって持ち込まれ住み着いた動物たちです。 またキウイが襲われてしまうほどペットの飼育が普及したのも、やはり人の生活の拡大によるものです。

 

外来種を手あたり次第殺したり、飼い犬に電気ショックを与えたりといった直接の対策を実行するだけでなく、もともとの原因は自然を無視した人の活動であったということを自覚することも、動物保護活動には必要な気がします。

 

ニュージーランド先住民族マオリ人たちには、「私たちは自然を支配するためにここにいるのではない。自然を守るためにここにいるのだ」という世界観があるそうです。

 

この世界観が生かされるニュージーランドを、私たちも応援していきたいと思います。

 

 

 

www.theguardian.com