動物殺害は「動物 vs. 人」だけでなく「人 vs. 人」の対立まで生み出してしまうということ

 

 

 

南アフリカ共和国にある自然保護区内にサイの密猟目的で侵入していたハンターたちが、同じ保護区以内に生息していたライオンたちに襲われ、殺されたうえ食べられてしまうという事件が報じられました。

 

遺体は無残な状態だったらしく、現時点では犠牲になったのが2名なのか3名なのかすらハッキリしないようです。

 

遺体発見現場の近くでは、ハンティング用のライフルや角を切り取るための斧などが発見されており、犠牲者がサイの密猟者であったことは間違いないと見られています。

 

中国やヴェトナムではサイの角に漢方薬としての価値があるという誤った思い込みがいまだに定着していて、その需要は衰えることがありません。

 

そういった一部の思い込みのせいでサイたちは密猟者たちに殺害され続けています。

 

このニュースに対しては、犠牲になった密猟者たちへの同情はほとんど寄せられていません。

 

むしろ多くが「密猟という行為に対して罰が下った」「因果応報だ」という類のコメントばかりのようです。

 

中には「こんな奴らの肉を食べちゃったライオンがかわいそう」などといった、少し行き過ぎたとも思われる言葉も見受けられるようです。

 

【ふたたび物議をかもすハンティング】

この報道の2週間ほど前、ツイッターである写真が拡散され、物議をかもしました。

 

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この女性はアメリカからわざわざハンティング目的で南アフリカまでやってきて、そのときの "戦利品" を写真に収め、フェイスブックにアップしていました。

 

実は2017年に撮影された写真らしく、なぜ今のタイミングで注目されるようになったのかは定かではありませんが、この写真を発見したあるツイッターアカウントが投稿し、それが一気に拡散されたものです。

 

 

このハンターの主張によれば、この種のキリンの生息数はむしろ増加しており、増加の理由は自分たちハンターがハンティングのために支払っているお金が、政府の野生動物保護政策に活用されたからである、ということでした。

 

「私がやっていることは、ハンティングを通して行う動物保護活動なのです」。

 

こうした主張はハンターたちがいつも使う決まり文句です。

 

もし政府が受け取るハンティング料収入が野生動物保護に役立っているのが事実だとしても、それ以前の問題として、動物を楽しみのために殺すということが倫理的に許されないという価値観は共有されなくてはいけません。

 

その一方で、もう一つ気になることがあります。

 

このハンターの写真を拡散したツイッター投稿者は、あまり適切ではないと思われる表現を使っていることです。

 

このハンターを「White american savage who is partly a neanderthal」(一部がネアンデルタール人である白人のアメリカの野蛮人)と、あえて人種を特定して蔑む表現を使って呼んでいるのです。

 

【結局対立しか生み出さない】

こうして二つの事例を見てくると、密猟であってもスポーツ・ハンティング(ゲームとしてハンティングをすること)であっても、動物殺害行為というものは、動物とハンターとの対立だけではなく、動物殺害に反対している多くの人たちとの対立まで生み出してしまっていることが分かります。

 

密猟者やスポーツ・ハンターたちが動物殺害をやめれば、動物たちに平穏な日々が訪れるだけでなく、過度な皮肉を言ったり攻撃的な発言をしたりといった、人間同士の対立も必要なくなるはずです。

 

動物殺害によっていい思いをする人よりも、嫌な思いをする人のほうが圧倒的に多いということを、密猟者やハンターたちには理解してもらいたいと思います。

 

 

 

出典:

Lions eat 'rhino poachers' on South African game reserve - BBC News

Trophy hunter Tess Thompson Talley complains of ‘vile’ messages and death threats | Metro News