“アジアのユニコーン” 「サオラ」という動物について学ぼう

f:id:georgekato:20180609171335j:plain

https://www.savethesaola.org/

 

ヴェトナムとラオスの間を走るアンナン山脈には、「サオラ」という名前の動物が生息しています。

 

おそらく知っている人、なじみのある人はほとんどいない動物だろうと思います。

 

この動物については私たち日本人がよく知らないだけでなく、実はその存在自体がよく知られていません。

 

【20世紀末に発見された “新種” 】

この動物は1992年に初めて発見されました。 「発見」といっても生存しているサオラそのものが発見されたのではありません。

 

1992年5月、ヴェトナムの林野庁は新しく設置された自然公園の生物多様性を調べるため、調査隊を派遣しました。

 

調査隊は作業の過程で地元のハンターからある動物の頭蓋骨を手に入れました。

 

その頭蓋骨はシカの頭部のようにも見えましたが、長い二本の角が生えており、それまでに生息が確認されていた東南アジアに生息する角のある動物たちとは明らかに異なっていたのです。

 

その後、似たような2本の角をアンナン山脈でも発見しました。

 

調査隊はこの角はカモシカなどではなく、ウシ科の新しい種のものであろうと推測し「saola」と名付けました。

 

他にもこの動物の毛皮などが発見され、翌1993年、調査隊は雑誌「Nature」に「ヴェトナムに生息するウシ科の新種」として発表します。

 

その直後には、隣国ラオスでもサオラが目撃されています。

 

 

 

【数少ない目撃情報】

実は今のところ、野生に暮らすサオラを目撃した人はほとんどいないそうです。専門の学者が目撃したことは一度もないと言われています。

 

数限られた目撃場所が点々と散らばっているせいでまとまった生息場所が特定できない一方、アンナン山脈の外では全く目撃されていません。

 

今まで確認されているサオラは、他の動物たちをとらえるために設置されたワナにかかってしまい、動けなくなっているところを保護されたものばかりなのです。

 

(保護されたサオラをとらえた動画。音声なし)

 

保護されたあるメスのサオラは、地面から肩までの高さが84cm、頭からお尻までの長さが150cmであったことが1998年に発表されています。 これは1頭の体長を測った記録にすぎず、サオラの平均的な体の大きさなのかどうかは分かりません。

 

また生きているサオラをとらえるために生息地域にカメラが設置されていますが、その姿がとらえられたのは最近では2013年でした。

 

f:id:georgekato:20180609172317j:plain

https://www.savethesaola.org/

 

 

 

【生息数わずか100頭】

サオラは「IUCNレッドリスト」で「絶滅寸前」に指定されています。

 

IUCNの見積もりでは生息数は750頭に満たないとされていますが、実際には100頭ほどしか生存していないのではないかという声も一部では上がっています。

 

サオラの生息している可能性がある地域は、針金などを使ったワナで獲物を捕らえる狩猟方法が行われているところです。 本来は獲物ではないサオラがこのワナにかかってしまい、身動きができなくなり、そのまま死んでしまうという事態が発生しています。

 

しかしサオラという動物が正式に「発見」され(=種として認識され)、その生息数がきわめて少ないことが分かってからは、多くの人たちがこの希少動物を保護しようと努力を続けています。

 

その一つとして、2006年「サオラ・ワーキング・グループ」が発足しました。

 

ヴェトナムやラオスの森林自然を専門とするスペシャリストたち約40人が集まり、サオラおよびその生息地の保護のために活動を行っています。

 

現地の人たちに協力を仰ぎ、設置されたまま放置されているワナの取り外しを行い、また上記のようにカメラを設置して目撃情報のほとんどないこの動物の実態を把握することに努めています。

 

f:id:georgekato:20180609172425j:plain

https://www.savethesaola.org/

 

サオラは、角は二本ありますが、その見た目から「アジアのユニコーン」と呼ばれています。

 

ユニコーン(一角獣)はご存知の通り伝説上の動物で、実在はしません。

 

アジアのユニコーンという呼び名はサオラが単にユニコーンを連想させる角を持っているからということだけでなく、ユニコーンのように実在しない動物を連想させてしまうほど希少であるという意味も含んでいるようです。

 

サオラがユニコーンのような “伝説” になってしまわないよう、今後もその保護活動を見守ってゆきたいと思います。

 

 

 

出典:

The Saola Working Group – Save the Saola

'Asian Unicorns' Are Critically Endangered And Need Our Help - The Dodo