ニュージーランドの飛べない鳥「カカポ」はなぜ絶滅の危機に追い込まれたのか
「カカポ」と呼ばれ、ニュージーランドに生息しているフクロウオウムについて、以前このブログでも取り上げたことがありました。
翼があるのに飛ぶことができず、夜行性のため日中は人目につかないところに隠れており、オスの体重が2.2㎏にもなる大型の鳥です。
カカポは現在200羽をわずかに超える数しか生息が確認されておらず、絶滅の危機に瀕しています。
この鳥が、ニュージーランドの「バード・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたことから、最近再び脚光を浴びることになりました。
カカポはすでに2008年にバード・オブ・ザ・イヤーに選ばれており、今回は2回目。二度も選ばれるのは前人未到だそうです。
カカポの保護活動はニュージーランドが国を挙げて行っており、少しずつですが成果を見せています。
1990年代に50羽だった個体数が、保護活動の結果、現在では213羽に増えています。
とはいえ、わずか200羽強ですので、まったく安心できる状況ではありません。
かつてはニュージーランド全域に生息していましたが、現在では天敵のいない島々でのみ生存しているということです。
オスのカカポはメスを引き付けるために大きな「ブー」という音を発し、またその匂いは「クラリネットのケースの中のような、かび臭く、樹脂や木のような匂い」だとバード・オブ・ザ・イヤーの広報担当者は述べています。
どうして絶滅の危機に追い込まれたのか
カカポは身に迫る危険に対してあまり強くないという特徴があります。
ふつうの鳥のように木の上に巣をつくるのではなく、地面の上に巣を作る習性があります。
また主要な防御手段は低木のカムフラージュをして周りの目をごまかす、というものです。
地上に巣をつくり低木の陰に隠れているだけなので、イタチやネコなどの攻撃を受けやすいのです。
また繁殖に時間がかかる鳥であることも分かっており、これも生息数が増えにくい原因のひとつです。
カカポは鳥類ばかりが暮らす島で進化したといわれています。
鳥ばかりがいる島ですから、カカポは事実上最も大きい動物だったということになります。
そうした環境で進化してきたため、上記のような特徴があっても外敵から襲われる心配はなかったのです。
しかしニュージーランドへ人が移り住み、イタチ、ネズミ、ネコなどもいっしょに生息するようになったことで、それまで恐れる必要のなかった天敵が現れることになりました。
こうした経緯から生息数が極端に減少したといわれています。
カカポの代表シロッコ
世界で最も有名なカカポはオスの「シロッコ」で、日本でも一部でよく知られているようです。
シロッコは呼吸器の病気のために人の手で育てられた最初のカカポです。
かなり幼い時期から飼育されてきたので、自分を人間だと思っているようだと言われています。
現在23歳(専門家たちの意見では、カカポの寿命は60年ほどとみられています)になったシロッコは、カカポを代表して絶滅危惧の現状を訴えるためにニュージーランド各地をツアーしたこともあります。
シロッコが有名になったのは2009年、動物学者マーク・カーヴァディーン氏の頭部と交尾しようとしている様子をとらえた動画が拡散されたことがきっかけでした。
この動画は1900万回以上の再生回数を記録しています。
またシロッコの公式ツイッターアカウントまで存在する人気ぶりです。
Skraaarrk! I can't believe the news! My kākāpo brothers and sisters have won @Forest_and_Bird's Bird of the Year 👑 Thanks to all of our human friends who voted.
— Sirocco Kākāpō (@Spokesbird) November 16, 2020
If you want to read about work being done to protect me and my family, find out more here: https://t.co/BY8l43YVyD pic.twitter.com/FBMEVj4t8P
現在生息が確認されている200羽強のカカポのうち成鳥は142羽ですが、これが少なくとも500羽にならないと危機的状況を脱したとは言えないといわれています。
ニュージーランド政府は2050年までにカカポの天敵となる動物たちがいなくなることを目標として活動を続けると宣言しています。