コロナ後の動物園 突然の来園者に動物たちは対処できるのか?

世界中で1年間に7億人以上の人々が動物園や水族館を訪れているといわれています。

 

そこに暮らす動物たちにとって「来園者」という存在は日常化しているわけです。

 

しかし新型コロナウイルスの大流行により、動物園は臨時休園を余儀なくされたため、今現在動物たちは空っぽで静まり返った空間で暮らしている最中です。

 

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動物たちの「自宅待機」

コロナによる影響で休園中の動物園で、動物たちはどのように「自宅待機」をしているのでしょうか。

 

インドのある動物園では、キツネはそこいらを歩き回り、カバはプールで楽しそうに水しぶきをあげ、トラも水浴びを楽しんでいるそうです。

 

その一方で来園者たちがいないことに気付いている動物たちもおり、たとえばイギリスのトワイクロス動物園では、サルたちが人を探している様子が報告されています。

 

日本でも、職員が近づくと隠れてしまうという東京・すみだ水族館チンアナゴが話題になりました(お願い人間のこと思い出して!「緊急開催!チンアナゴ顔見せ祭り!」 | 東京スカイツリータウン®にある「すみだ水族館」【公式】)。

 

動物園再開 突然やってくる人の波

このように来園者のいない生活を続ける動物たちですが、近い将来動物園が再開されたとき、突然押し寄せてくる人々に動物たちはどう反応するのでしょうか?

 

たとえば各家庭で飼われているペットの場合、外出自粛のあいだずっと一緒にいた飼い主がまた通常の仕事に戻ってしまうと、ペットが「分離不安障害」を引き起こす恐れがある、と研究者や動物慈善団体は指摘しています。

 

しかし動物園で暮らす動物たちの場合、これとは逆のことが起こる可能性があるのです。

 

 

 

過去の似たような例から類推する

緊急事態宣言(欧米では外出禁止など)の出される前にも、イベントなどの目的で変則的な開園スケジュールが実施された動物園がいくつもありました。

 

必ずしも将来を正確に予測することはできませんが、こうした動物園で動物たちがどのように反応してきたか、というデータを用いることが検討されています。

 

それによって、近い将来の再開園ではどんなことになるのか、ある程度推測することができるかもしれません。

 

たとえば、閉園後の夜間の動物園は比較的平穏で静かな環境になり、動物たちは警備員以外の人と顔を合わせることはない状況におかれます。

 

しかし、深夜のツアーなどのイベントのために通常の開園時間外に来園者を受け入れていた動物園もありました。

 

こうしたイベント時の動物たちは様々な反応を示す傾向があります。

 

たとえばドイツの動物園で夕方に花火大会が行われたとき、ゾウは群れの中のほかのゾウのそばで安心を求めている様子が観察されましたが、必ずしも屋根のある飼育部屋の中に逃げ込もうとはしなかった、という報告が出されています。

 

またロンドン動物園では、午後10時まで来園者を受け入れて夕方に園内を案内するサービスを実施していました。

 

その最中のライオンの行動には、通常の開園時間中の行動と比較しても変化がないことが分かっています。

 

こうした過去のデータから動物たちの行動パターンを予測し、近い将来の開園再開に備えよう、というものです。

 

私たちにできること

今回の外出自粛(欧米ではロックダウン)は、来園者のいない期間としてはこれまで動物園が経験したことのない長さになりました。

 

動物園では動物たちが通常の生活に戻れるよう最大の努力をしています。

 

突然の変化が動物たちを混乱させることのないよう、段階的な開園を計画している動物園もあります。

 

また今回の臨時休園中に生まれた動物の赤ちゃんにとっては、人の目にさらされる初めての経験になるため特別なケアが求められるでしょう。

 

人間から動物たち、とくに大型類人猿にコロナウイルスを感染してしまう可能性もあり、その点にも十分な注意が必要とされます。

 

おそらくどの動物園でもこの数か月間にわたって入園料収益がまったく上がっておらず、運営上かなり大変な状態であると想像されます。

 

同時に、動物園に暮らす動物たちもこれまでにない経験をしており、今後も新しい状況に適応するための特別な時間を必要とするでしょう。

 

もし緊急事態宣言解除後に動物園へ行く場合は、待ちに待った動物園へ勇んで出かけるのではなく、各動物園が指定している来園方法や職員たちによる案内などに注意を向け、遵守するよう心がけましょう。

 

それが、おそらく私たちが動物たちのためにできるもっとも身近な援助になると思われます。

 

 

 

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