タイの動物園でサーカスのような曲芸をやらされていた子供ゾウ「ダンボ」の話
タイのプーケット動物園には、ゾウの子供「ダンボ」(2歳)が暮らしていました。
ダンボは単に動物園で暮らしているだけではありません。 音楽に合わせて踊らされ、来園者たちと写真撮影をさせられ、さらにはフラフープを使った曲芸までさせられていました。
「Phuket Zoo」と言いながら、事実上はサーカスと同じありさまだったのです。
ダンボたちは「ブルフック」と呼ばれる鋭利な棒でおどされ、恐怖におびえながら一日に3回パフォーマンスをやらされていました。 来園者たちはお金を払って、こうしたゾウたちと一緒に写真を撮ったり、曲芸を観て拍手したりしているのです。
そんなダンボたちの様子をとらえた動画がネットで公開され、大きな反響を呼びました。
とくにダンボのやせ細った体にはショックを覚えます。見るからに栄養が足りていないようです。
また鼻の先端を咥える仕草を繰り返しており、これはゾウがストレスを感じているときに取る仕草なのです。
【約2週間で20万人が署名】
動物保護団体「Moving Animals」は、まだ幼いダンボを窮状から救うために、ダンボの現状を知らせるためのウェブサイトをつくり、ゾウ保護区への移送・解放を訴える署名活動を始めました。
ほかにも旅行サイト「TripAdvisor」でも、この動物園に対する批判や低評価のレビューが目立つようになりました。
こうした活動を通して、ダンボ解放に賛同する署名は短期間で着実に増えてゆきます。
署名サイトが立ち上げられたのが2019年4月2日ですが、その4日後の4月6日には2万人の署名が集まっています。
その声に押されたタイの動物管理当局は4月9日、ダンボが痩せすぎていることを確認し、「この子供ゾウが感染症や消化不良を患うことがないよう」注意する必要があると認めました。
それでも体重の減少は下痢が原因であり、また新しい歯が生えてくる最中なので食べる量が必然的に少なくなる時期だと主張。さらには「残酷なパフォーマンスは行われておらず、ストレスの兆候は見られない」と反論しています。
しかし同じ4月9日には署名者数が5万人に達したため、翌10日に動物管理当局はダンボにパフォーマンスさせることを禁ずるようプーケット動物園に指示を出しました。
その後も署名者数はどんどんと増えてゆき、4月14日には署名者数が10万人に、さらにその4日後の18日には20万人に達しました。
動物管理当局の言い分では、プーケット動物園には適切な保護施設があり、十分なケアとエサが用意されている、ということになっていました。 また一月後には当局がもう一度動物園に行ってダンボの回復をチェックし、もし完全に回復する前にダンボをパフォーマンスに出演させた場合は、タイの動物虐待禁止法違反になる、とも述べていました。
【本当の原因は・・・】
しかし4月17日、ダンボは動物園内に設けられた場所でうずくまっているところが発見されました。
後になって分かったことですが、ダンボはすでに体を支えるだけの力がなくなっていました。そして倒れた体を起こそうとしたとき、後ろ足を両方とも骨折してしまって動けなくなっていたのです。
動物園の獣医師が世話をしましたが全く回復しないため、ゾウを専門に治療する病院へ運ばれました。 そこで検査をしてみると、足の骨折に加えて、内臓の感染症が発見されました。
4月19日にはほとんど食べることも出来なくなり、その翌朝、ダンボは死亡しました。
病院の担当医も、ダンボの死因は動物園での虐待や不十分な世話ではない、内臓疾患のために下痢を繰り返し必要な栄養を取り込むことが出来なかったことが原因だ、としています。
その一方で、ダンボが未熟児として生まれていることがこうした状態を引き起こした、とも認めています。
疑問に感じるのは、なぜ未熟児として生まれ、健康状態が思わしくない子供のゾウを動物園がパフォーマンスで使い続けたのか、ということです。動物園はダンボが未熟児であることを分からなかったのか、もしくは分かっているのに十分なケアをしなかったのか、いずれの場合でも動物園側に問題がないとは言えないでしょう。
直接の死因が動物園での取り扱いではなかったとしても、死因を引き起こした原因は動物園での取り扱いだったと考えられます。
ダンボは病院の敷地内に埋葬されたということです。
出典:
・Baby Elephant Forced to Perform at Phuket Zoo | PEOPLE.com