カナダの動物園 コロナの影響で笹の輸入ができずパンダを中国に早期返還
すでに新型コロナウイルス感染症の影響が様々な種類の動物たちに及び始めているというニュースは、これまでもいくつかの記事で紹介してきましたが、今度は「動物園のエサ不足」という問題が発生しました。
カナダのカルガリー動物園では笹が十分に確保できないことから、2頭のジャイアントパンダを中国に送り返したということです。
一日に40㎏の笹を食べるパンダ
パンダが笹を主食としていることはよく知られていることですが、このカルガリー動物園では中国から輸入した笹をエサとして与えていました。
しかし今回のパンデミックの影響で輸送するフライトが中断されてしまったことから、笹の供給が大幅に遅れることが判明したのです。
カルガリー動物園のパンダの場合、毎日約40㎏の笹を食べているそうです。
動物園では笹を調達できる別のルートを見つけようと模索しましたが、どうしても乗り越えることができない物流上の問題がありました。
検討された新しい調達ラインも直前の通知だけで中断される可能性があったため、断念せざるを得ませんでした。
さらに動物園は、今後懸念されるコロナウイルスの第二波が起こった場合を考え、今のうちに中国に戻ってもらったほうが安心だと判断したのです。
カルガリー動物園のランティエ園長は「これは非常に難しい決断でした。しかし私たちが愛し、世話をしている動物たちの健康と幸福がやはり第一なのです」と述べています。
動物園は数週間前からパンダを移動させるための手続きを開始しており、今週中に許可が下りる見込みとのことです。
パンダ外交
この2頭は2014年にカナダに到着し、トロント動物園で5年間過ごした後、2018年3月にカルガリーに移動しました。
2頭のパンダは中国との10年契約で、2023年までカナダに滞在することになっていたものです。
中国はこれまで何年もの間、いわゆる「パンダ外交」として知られているキャンペーンを通じて、世界各国にジャイアントパンダを貸し出してきました。
各国でパンダを直接見る機会を提供することで、中国との友好と協力の印としてきたことはよく知られています。
ジャイアントパンダを外交の手段として使うことの是非はまた別の問題ですが、今回のような世界的危機の中でのカルガリー動物園の判断は的確であり、評価されるべきだと思います。
2016年に危険度が下がったものの依然として保護が必要
ジャイアントパンダは地球上で最も希少な動物の一つですが、これまで保護活動が活発に行われ続け、近年ではいくつかの成功例が報告されています。
2016年、ジャイアントパンダは国際自然保護連合(IUCN)によって「絶滅危惧(endangered)」から「危急(vulnerable)」に変更されました。
これは危険度が一ランク低くなったことを意味します。
しかし、これでジャイアントパンダの生息数が安定したわけでは決してありません。
世界自然保護基金(WWF)によると、野生に生息しているジャイアントパンダは推定1,864頭しかいないという数字も出されており、ようやく絶望的な状態を脱したばかりなのです。