イギリスに暮らす鳥の4羽に1羽が絶滅危惧 2021年レッドリストに70種が掲載される
(Swifts break record by staying aloft for 10 months at a time | New Scientist)
イギリスに生息する鳥類のうちレッドリストに掲載されている(絶滅の危機に瀕している)種は現在70種あり、1996年と比べるとほぼ2倍になります。
これはイギリスで繁殖または越冬している鳥の4羽に1羽が深刻な問題に直面していることを意味します。
前回レッドリストがアップデートされた2015年以降、新たにレッドリストに加わった種として、アオカワラヒワ、アマツバメ、ニシイワツバメなどがあります。
高地から海まで すべての生息地が犠牲に
野生の鳥類の生息数減少については、その原因が人間の活動であることはおそらく多くの人が想像できることでしょう。さらにそれは高地に生息する鳥から海に暮らす鳥まで、すべての生息地が影響を受けているのです。
平地の場合
平地から台地を主な生息地としているキジバトなどは、この数十年にわたって行われてきた農地開発が原因で生息地やエサが奪われており、すでに長い間にわたって生息数が減少してきました。
高地の場合
高山地帯に暮らす鳥はとりわけ気候変動に対して敏感で弱いことが分かっています。 高地の気温が上昇するとその土の中に生息する幼虫の生存率が低下します。これはチドリなどが必要なエサを獲れなくなることにつながります。
海の場合
気候変動に敏感なのは海に生息する鳥も同じです。例えば、温暖化で水温が上昇した海では、コウナゴ(またはイカナゴ)といった魚の数が減少しています。こうした魚をエサとしているツノメドリ(=パフィン)やミツユビカモメなどの海鳥にとっては大きな打撃になっています。
渡り鳥も例外ではない
今回のレッドリストにはいわゆる渡り鳥であるアマツバメとニシイワツバメの2種も加わっています(アマツバメは1995年以降、英国で58%減少しました)。
昆虫をエサとして生きているこの2種のツバメは、冬になるとアフリカに渡りますが、干ばつの年には生存率が低下してしまいます。イギリスには繁殖のために戻ってきますが、近年になって改築された家屋に巣をつくることができなかったり、エサとなる昆虫の数が減少しているため、結果としてツバメたちの生息数が減少しているのです。
オジロワシの成功例も
イギリスでは鳥類全体が減少傾向にありますが、今回のレッドリストについては希望の持てる例もありました。 これまでレッドリストに含まれていたオジロワシが今回は含まれていません。
オジロワシはイギリスに生息する最大の猛禽類ですが、これまで行われてきた保護活動と生息数回復のためのプロジェクト成功により、レッドリストよりも懸念度合いの低い「アンバーリスト」に掲載されることになりました。
他の動物たちを取り囲む状況も決して楽観できないものばかりですが、鳥類はとくに環境の変化の影響を受けやすいため、比較的分かりやすい指標として注目されます。
オジロワシの例のように、その地域に暮らす人たちの努力によって良い方向に転換することができる場合もあるので、これ以上手遅れにならないうちに行動を起こすことが求められるところです。