都市封鎖の続くアメリカの繁華街では多数のネズミが目撃される エサ不足で共食いも

新型コロナウイルス感染症の影響で、欧米諸国では長らく「ロックダウン(都市封鎖)」が続いています。
人が外を歩かなくなり、いつもは賑やかだった通りもひっそりと静まり返り、またレストランなどから出される生ごみの量がここ数か月急激に減りました。
そんな中、これまで生ごみが主なエサだったネズミたちが共食いをしたり、今まで姿を見せなかったような場所に現れるなど、特異な行動が目撃されるようになりました。
エサ不足から共食いに
これはネズミの生息数そのものが増えたということではなく、これまでは人の目につかない狭い場所やポリバケツの裏などに暮らしていたネズミたちが表に出てくるようになった、と考えられています。
アメリカの疾病対策予防センター(CDC)による最近の発表によれば、米国の都市がネズミのエサ不足の状態になってしまったために、「異常な、または攻撃的なネズミたちの行動」を目撃する可能性があると警告しています。
地域全体、特に密集した商業地域の閉鎖が、ネズミが食べることのできるエサの減少につながっている。一部の管轄区域では、エサ探しのための活動が増加していると報告されている。
都市に生息するげっ歯類を専門に研究するボビー・コーリガン氏は、NBCニュースでこう語っています。
ネズミたちは本当に空腹のときには非常に悪い行いをするようになります。ネズミ同士で争い始め、大人のネズミは巣の中の若いネズミを殺し、子ネズミを食べてしまうものも出てくるのです。
ニューオーリンズのツアーガイドであるマルサラさんは、実際にこの共食いという恐ろしいネズミの活動を目撃しました。
角を曲がると、30匹ほどのネズミがいて、通りの真ん中で何かに群がり "ごちそう" を食べていました。
身の回りの衛生管理を徹底
現時点で報告されている限りでは、共食いをするネズミが直接人に害を与えたという話はないようです。
しかしネズミたちが通常ではありえない行動をしていることは事実ですので、やはり人も注意が必要になります。
では、共食いまでする攻撃的なネズミから身を守るにはどうすればいいのでしょうか?
CDCによるガイダンスでは、まずは家の中をきれいにすることがすすめられています。
身の回りの衛生管理をすることで、ネズミをおびき寄せてしまう可能性のある状態をなくすことが求められているのです。
具体的には:
- 厚手のプラスチックや金属製の容器に食べ物を入れておく
- 厚手のプラスチックや金属製のゴミ箱を使う
- 食べこぼしや汚れた食器をすぐに片付ける
- ペットフードを一晩中外に出さない
- 堆肥箱を家からできるだけ離れた場所に置く
などがアドバイスされています。
何が「正解」なのか分からない問題
日本ではいったん緊急事態宣言が解除されましたが、今後欧米でロックダウンが解除された後、どういった状況が想定されるでしょうか?
今まで臨時休業が続いていたレストランが再開し始め、生ごみが以前と同じように出されるようになると、ネズミがさらに繁殖する可能性があります。
CDCによると、実物を目撃する以外で、自宅などでネズミが発生している可能性をチェックする方法として「ネズミが通過した跡、穴や巣、エサの食べ残し、フン、毛、放尿の跡、ネズミのたてる騒音、尿からの悪臭」などをチェックポイントとして挙げています。
どんな動物でも共食いをするというのは異常な状況に置かれている証拠ですので、一日も早く正常な生息環境に戻ってほしいという願いはあります。
しかしその一方で、レストランから出される生ごみをネズミたちが食べ散らかしている状況は、都会で生活する人間にとって必ずしも望ましいことではありません。
結局、何が「正解」なのかは簡単に言えない問題ということになりそうです。
新型コロナウイルスの引き起こした状況は、こういう場面でも今までにない問題を引き起こしているのです。