野生動物の売買 いつまでたっても違法取引がなくならない5つの理由
野生動物の違法取引は、すでに何十年も前から世界中の問題となっていました。
そして現在、新型コロナウイルス感染症の流行が、一説によると野生のセンザンコウの違法取引が原因であると報道されて以来、あらためて野生動物取引に対する関心が強まってきています。
この記事では、なぜ人は野生動物を違法に捕獲・売買し続けるのか、その大きな理由を5つにわけて説明しています。
1. 「実用的だ」と信じられているから
野生動物を買い求める人たちの中には、日常生活上必要だから買っている、という人たちがいます。
これには食物や薬として消費する、建築の一部に使用する、燃料として木材などの植物を使用する、などがあげられます。
例えば、乾燥させたタツノオトシゴが中国や台湾で販売されていますが、これには性機能不全、難産、関節炎などのさまざまな病気の治療に役立つと信じられており、いわゆる「漢方薬」の一つとして古くから使用されているものです。
少なくとも西洋医学ではこうした効能は確認されていませんが、中国の人たちは西洋医学以上の歴史をもつ漢方の力を信じており、「健康のために必要」なものとして扱われています。
2. 「金になる」から
金銭的利益、つまり商売になるから野生動物を売買している、という人たちもたくさんいます。
野生動物の製品を購入して、それをすぐ転売するか、または将来のための投資として飼い続ける、というものです。
例えばトルコなどの観光地で商売をしている野生動物販売業者たちは、観光客用の写真撮影で使うスローロリスを飼育して貸し出しています。
2013年、歌手のリアーナがタイでの休暇中にスローロリスとの自撮りをツイートしたことがありました。
その後、この写真がきっかけとなって、タイの警察はこのスローロリスの販売を行っていたグループを家宅捜索し、2人が逮捕されるという事件にまで発展しています。
リアーナはもちろん悪意などなかったでしょう。おそらくスローロリスが可愛いというだけの理由でやったことだと思いますが、私たちも同様に、違法取引された野生動物と無意識にかかわっているという可能性があるのです。
(https://animals.sandiegozoo.org/animals/pygmy-slow-loris)
3. 社会的な立場を表すため
現地で信じられている社会的評価や儀礼のために野生動物を売買する場合があります。
自分の社会的評価を向上させるため、または他の人との関係を強化するために、野生動物の売買にかかわる場合があるのです。
例えば、ベトナムでは成功したビジネスマンは同僚や顧客に対して自分の地位を誇示するために高価でサイの角を(違法であるにもかかわらず)購入する慣行があり、批判の的になりながらもいまだに続けられています。
4. 好奇心から
単に目新しさや好奇心がもとで野生の動植物に手を出す場合もあります。
製品の見た目や感触が魅力で手を出しただけなのに、その製品が実は野生の動植物で作られたものだった、ということもあります。
中国では、蘭の収集を趣味としている人たちは、その出所よりも美しさに価値を置いてしまうため、野生から違法に供給されたものであってもためらわずに手を出す人が後を絶ちません。
5. 宗教上の儀式で使われるから
宗教上の目的、またはスピリチュアルな効果をうたったビジネスによって野生動物が売買・消費されることも少なくありません。
たとえば、精神的な幸福感を高めるために野生動物の製品を使用する、宗教上の修行や儀式を執り行う、などの場面で野生動物が使われてきました。
カリブ海に浮かぶセントルシア島では、ランサンと呼ばれている木の樹脂が、宗教の儀式で使われるお香の原料とされています。
しかしこの樹脂目的でランサンの木が大量に伐採されてしまい、カリブ海の島々から姿を消しつつあるのです。
これは単にランサンという植物だけの話ではなく、この木を含む生態系そのものがバランスを崩し始めるきっかけになります。
つまり、現地に生息する野生動物たちにとっても大きな危機を導くことになるのです。
関心を持つことから始める
野生動物の取引に関わる製品や人々は実に多岐にわたっているため、これをきちんとしたカテゴリーに絞ることは簡単ではありません。
ほとんどの場合、上記の5つのうちの一つだけに当てはまるというよりも、複数の理由にまたがっている場合の方が多いようです。
いずれにせよ、人々が野生動物を売買・消費する動機を知っておくことは、将来それをやめさせるための最善の方法を見出す第一歩になることは間違いありません。
まずは私たちが「なぜ人々は違法取引を続けるのか」について関心を持つことが必要だ、と言えるでしょう。