「白いキリン」2頭がケニアで殺害される 絶滅危惧種としてのキリンにあらためて注目を

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ケニアガリッサと呼ばれる場所にある自然保護区をパトロールしていた監視員が、ほぼ骨だけの状態になった2頭のキリンの死体を発見しました。

 

調査の結果、数か月前から行方不明になっていた2頭であることが分かりました。

 

のちに公表された情報によると、この死体は母親とその7歳の子供で、この保護区域に暮らしている3頭の白いキリンのうちの2頭であるということです。

 

死体やその周辺の調査から、武器を持った密猟者たちが2頭を殺害し、皮をはいで肉を切り取った残骸であると見られています。

 

密猟者は特定されておらず、その目的も不明。現在ケニアの動物保護団体が調査を進めています。

 

この自然保護区には白いキリンがもう1頭暮らしていますが、これがケニアのみならず世界で生き残った唯一の白いキリンである可能性もあります。

 

 

 

「白変種」のキリン

この白いキリンはいわゆる「アルビノ」ではなく、「白変種」(leucism)と呼ばれ、色素の減少により体毛・羽毛・皮膚等が白化するものです。

 

アルビノの動物たちとは異なり、白変種の動物たちは体内で色素を作ることができるため、眼や尾っぽの先の毛は茶色をしているのです。

 

白変種は他の多くの動物たちにもみられるものですが、キリンの白変種は極めて珍しい例だということです。

 

今回死体で発見された2頭と生き残った1頭以外では、アフリカでわずか1頭だけしか発見されておらず、2016年1月にタンザニアの国立公園で目撃されたのが最後です。

 

 

生息地減少と密猟の横行が原因

今回2頭の死体が発見された件については、珍しい白いキリンが殺されたことが問題なのではありません。

 

絶滅危惧種に指定されている動物が違法に殺害されたことが問題なのです。

 

キリンの生息数が減少している理由は二つあります。

 

一つは生息地域が減らされていることです。

 

近年はアフリカ諸国でも工業化・都市化が進んでおり、そのために今までキリンが自由に暮らすことのできた場所がコンクリートアスファルトに変えられてしまっています。

 

また農地開拓が進んでいることも、同様の結果を生んでしまっています。

 

キリンの生息数減少のもう一つの原因は、この白いキリンたちのケースと同じく、密猟が横行していることです。

 

毛皮目当ての密猟に加え、キリンの肉を食糧難に苦しむ地域の市場に持ち込むと大きな需要がある、という事実も報告されています。

 

また、キリンの長い尾を目当てに行われる密猟もあります。

 

ある地域の文化ではキリンの尾はステイタスを表すシンボルと見られており、新郎が結婚を申し込む際に新婦の両親へ贈るプレゼントとして伝統的に使われているそうです。

 

30年間で50%以上も減少

キリンには全部で9つの亜種が存在しますが、この白いキリンたちは「アミメキリン」と呼ばれている種です。

 

現在野生のアミメキリンの生息数は15,780頭と言われており、30年前の36,000頭から56%も減少しているのです。

 

キリンは2016年になって初めて絶滅危惧種に指定されました。

 

しかし、アミメキリンを含めた野生のキリンたちは過去100年の間に少しずつ減少してきていたのです。

 

アフリカ大陸の中でも、かつてキリンが元気に暮らしていたセネガル、ナイジェリア、モーリタニア、マラウィ、ギニアエリトリアブルキナファソの7か国には、今はキリンは一頭もいなくなってしまいました。

 

目立つキリンが殺されたから問題視するのではなく、キリンという動物そのものが今絶滅の危機に瀕しており、その原因は人間にあるのだということをあらためて意識する必要があるでしょう。

 

 

 

www.livescience.com