スイス ニワトリのヒナを「シュレッダーで間引き」が禁止される 殺処分全廃への第一歩
ニワトリのオスのヒナは、食用玉子を出荷している酪農業者にとっては「育てても役に立たない」ため、これまで残虐な殺害方法で間引きされてきました。
しかし今回、この方法がスイスで正式に禁止されることになりました。
これはほかのヨーロッパ諸国と比べても一歩先を行った決断であり、高く評価されています。
シュレッダーによる殺処分
ニワトリのヒナのうち、オスのヒナは育てても将来卵を産むわけではないので、まだヒナのうちに殺してしまうという “在庫管理” が行われています。
オスのヒナを殺すときにかつて広く用いられていた方法があり、これは今回参照した記事によると「shredding」という英語が使われています。
「shred」はオフィス機器のシュレッダーという言葉で私たちにもなじみのある単語で、「裁断する」という意味です。
つまり生きたヒナをそのまま専用のシュレッダーにかけて殺害してしまう、という方法です。
この方法はすでに数年前からスイスでは行われていません。しかし正式に禁止されていたわけではないため、これまでも合法的な殺処分方法ということになっていました。
今回、国会でこれを禁ずる法案が可決したのです。
下院の委員会が発表した文書にも「卵や食肉のためだけに生き物を育てるということは、動物たちを単なる物体とみなすことになる」と、はっきり述べられています。
最近はヴェジタリアンやヴィーガンの人も増えていますが、少なくとも伝統的に肉が主食のヨーロッパでこうした意見を国会が発表するのは、大きな前進であると言えるでしょう。
方法を変えて続けられている殺処分
スイス国内には卵の孵化を専門に行う施設が4つありますが、このどちらでもシュレッダー方式は数年前に取りやめています。
では、スイスではオスのヒナはどのように扱っているのでしょうか? 殺害せずに育てているのでしょうか?
残念ながら、シュレッダーにかけられてしまうことがなくなっただけで、今でもオスのヒナは殺処分されています。
毎年300万羽のヒナがガスによって殺されているのです。日本の保健所で捨てられたペットを殺処分するときと同じように、オスのヒナたちは二酸化炭素ガスによって窒息死させられています。
理由は変わらず「卵を産まないニワトリを育ててもビジネスには何の役にも立たない」というもの。単に殺害方法が変わっただけです。
殺害されたヒナの50%以上は、主に動物園などで使われるエサに加工されて販売されてゆきます。
代替案を模索中
しかしこの二酸化炭素ガスでの殺処分も正当な方法として受け入れられているわけではありません。酪農業界でもこれに代わる方法を探しています。
現在考えられている代替案の一つとしては、オスのヒナを殺害せず食肉(鶏肉)用として育成するというものです。
しかしこの方法も、実際に採用される前に解決しなくてはいけない問題が数多くあります。
鶏肉はふつう鶏肉専門の酪農場から出荷されるもので、玉子を生産する酪農場から出荷される鶏肉は消費者に好まれないという傾向もあるようです。
ヒナがまだ卵から出てくる前の段階で性別を判定する技術開発が世界各国で進められており、これを使えばまだ卵の段階で食肉用のオスとたまご用のメスを分けることが出来る、と期待されています。
しかしこれもまだ実現段階の見込みは立っていません。
スイスの鶏卵生産業組合である「GalloSuisse」はこうコメントしています:
私たちは代替方法を見つけ出そうと一生懸命に取り組んでいます。消費者、生産コスト、資源の確保、動物福祉、倫理、生態系、そういったすべての側面を考慮に入れて、最善のソリューションを探しているところです。
まだ残酷な殺処分は続けられていますが、産業そのものが主体になって真剣に取り組んでいるその姿勢は高く評価されてほしいと思います。