イギリスで40年ぶりにカモメの駆除が計画される 人による餌付けがそもそもの原因

2019年になって、イギリスでは人や動物がカモメに襲われるという事例が相次いで報道されました。

 

「凶暴化するカモメ 海水浴客を襲う」

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Angry seagulls dive-bombing beachgoers | Daily Mail Online

 

「カモメが犬を殺害 その2週間後には赤ちゃんを襲う」

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メディアがこういう見出しで騒ぎ立てるたびに、当然のことながらイギリスの人たちのカモメに対する恐怖心は大きくなっていきました。

 

自治体がカモメ駆除を計画

こんな中、イングランド西部のウスター地区ではこの1年間、カモメ対策のために3万ポンドの費用をつぎ込んできました。

 

偽物の卵をカモメの巣に入れておくと、それをカモメが本物と勘違いして孵化させようとするため、これ以上産卵が行われなくなり、結果としてカモメの生息数が減っていく、という方法が行われました。

 

ほかにも、カモメが生ごみをエサとして食べないようカバーするメタル製の網を設置する策も講じられています。

 

さらにこのウスター地区の自治体は、カモメの駆除を真剣に検討し始めました。 カモメの駆除は、イングランドでは40年以上行われていないことでした。

 

 

 

効果を疑問視する声

カモメを駆除するには、カモメのヒナを見つけ出して「取り除く」のが通常のやり方です。

 

カモメの寿命は15~30年ですから、巣を探し、ヒナを見つけては駆除するという作業を最低でも15年間は続けないと効果は期待できません。

 

また、カモメはとても見つけにくいところに巣をつくる習性があるため、巣の発見だけでも大掛かりな作業になると見込まれています。

 

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王立鳥類保護協会のトニー・ホワイトヘッド氏は、駆除というやり方には懐疑的です。

 

こうした手間のかかるやり方よりも、条例を制定してカモメに餌付けをすることや道路に食べ物を捨てることを禁止する方がより効果的な方法である、と主張しています。

 

また、英国鳥類学会のヴィオラ・ロス=スミス氏は、カモメの駆除は効果が低いだけでなく、別の問題を引き起こしてしまうと指摘しています。

 

カモメの巣からヒナを駆除し、その巣が取り壊されると、同じ場所に別の鳥が巣をつくりにやって来ます。 つまり、他の鳥をおびき寄せてしまうことになるのです。

 

また駆逐されたカモメは巣作りができる別の場所を探し出します。 すると今度はその場所でカモメの生息数が増えてしまうので、同じ問題が繰り返されることになるのです。

 

原因は人による餌付け

結局、ウスター地区では今回はカモメの駆除は行わないことになりました。

 

イギリスには「Wildlife and Countryside Act」という法律があり、カモメ駆除は違法行為になる可能性が高いと判断されたからです。

 

駆除に代わる手段としてレーザービームを使ってカモメを脅し、近寄らせないという方法が実行されるようです。

 

鳥類学者のマーティン・ケイド氏は、「原因はすべて私たちにあります」と語っています。「餌付けをするせいで、カモメたちは海辺の町に集まってしまうのです」。

 

カモメはふつう海岸の崖に巣をつくってヒナを育て、エサは海で獲って暮らしています。本来であれば、人と関わってトラブルになることはないはずなのです。

 

しかし海辺の町に暮らす人たちや観光客らがパンやポテトフライで餌付けをするようになってから、人の暮らす場所にカモメが集まり、人とのトラブルが多発するようになったのです。

 

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すでに多くの自治体ではカモメの餌付けを禁止していますが、ほとんど守られていないのが現状です。

 

餌付けをする人たちも、決して動物が嫌いなわけではなく、むしろ好きで興味があるからやるのだと思います。

 

しかしその行為が原因となり、今はむしろカモメが悪者扱いされてしまっているのはとても残念なことです。

 

原因がはっきりしている以上解決も可能なはずですので、イギリスの人たちの分別ある行動を期待したいと思います。

 

 

 

出典:

Angry seagulls dive-bombing beachgoers | Daily Mail Online

Gull cull: should nuisance birds really be shot? | Environment | The Guardian

Planned seagull cull in Worcester called off