豚コレラによる殺処分の減少に役立つか?ウィルス感染した家畜を早期発見する最新技術

f:id:georgekato:20190421185450j:plain

 

2019年2月に愛知県で豚コレラが発見され、その後も複数の養豚場で発見が相次いできました。4月21日には8例目の発見が報じられています。

 

報道によると、新たに発見された養豚場では1,800頭から2,000頭(報道によって異なる)のブタが殺処分されるということです。

 

コレラは人に感染することはなく、また感染した豚肉を食べても人体に影響はないともいわれています。 しかし短期間で感染が広まってしまい、また特効薬もないため、発見された養豚場ではすべてを殺処分するという方法しかない、というのが現状のようです。

 

ほかにも鳥インフルエンザなど、以前からこうした状況で家畜が大量に殺処分されたことが何度もありました。 これは日本国内に限らず、海外でもその解決法が模索され続けています。

 

ここではベルギーの大学が最新のIT技術を用いて動物の健康管理に役立てることに成功した、という記事をご紹介します。

 

 

 

【ブタの咳の音から異常を察知する】

たとえ経験豊富な酪農家にとっても、ブタを飼育している建物内の物音はとても複雑に響きます。ブタたちが鼻を鳴らす音、エサを食べる音、そして換気扇の唸る音など、いろいろな音がつねに混ざり合って響いているからです。

 

時にはたった1頭のブタが発した咳の音が、実は何かの病気の症状(の可能性)を示していることがあります。しかしいろいろな音が鳴り響く飼育場の中では、簡単にやり過ごされてしまいます。

 

酪農家の人たちが24時間ずっと動物たちと付きっきりで接しているわけではありませんし、たとえ咳を聞き分けることが出来てもそれが健康面での危険信号であると認識できるとは限りません。 現時点では、その場にいる人(働いている酪農業の人たち)の注意力と直感に頼らざるを得ない状況なのです。

 

しかし最新のテクノロジーを使うことで、人の力や感覚ではできない部分をカバーしてくれるようになると期待されています。ベルギーのルーベン・カトリック大学のチームがこの技術の開発に携わりました。

 

彼らは必要な音を拾ってくれる特別なマイクとそれを分析するアルゴリズムを開発し、ブタたちの暮らす騒がしい建物の中から必要な音を取り分けることが出来るようになりました。

 

もしブタが呼吸器系の疾患を抱えていた場合、その兆候をブタの咳の音から発見してくれるのです。異常を察知した機器が酪農家の人たちにアラート通知をしてくれるため、現場にいなくても事態の発生を知ることが出来ます。かかりつけの獣医師に直接通知が届くようにすることもできます。

 

人が発見する早さと比較してみると、この発見システムのほうが2週間早く警告を発していたことが分かりました。 早く発見できるということは、酪農家の人たちも獣医師も早い対応ができ、深刻な症状になるのを未然に防ぐことにつながります。

 

また家畜に抗生物質を投与することを出来るだけ避ける、というメリットも期待できます。

 

この技術を使えば、人が今まで通りの作業を毎日続けているあいだに、システムが自動的・継続的に家畜の様子をモニタリングして、何らかの兆候を見つけ出してくれることになるのです。

 

【健康管理以外でも役立つ期待】

以上は、いま日本で起こっている豚コレラの事象とは直接は関係ない話ですが、それでもこうしたIoT(モノのインターネット)の応用によって、現状よりは良い方向に進むことは期待できるでしょう。

 

この記事で取り上げているシステムはブタの咳の音だけですが、同様の技術が家畜の体重の増減、ストレスのレベル、体の動かし方の変化なども遠隔でモニタリングして、健康面での異変がないか継続的なチェックをしてくれることも期待されています。

 

加えて、畜産業を監督する官庁からの査定が入った場合でもこのモニタリングの記録を用いることが出来るようになり、また常にモニタリングが続いていることで、動物虐待などの防止にも役に立つと考えられます。

 

今は豚コレラの終息を祈るばかりですが、長期的にはこのような技術の発展・普及に期待できるということは、前向きなニュースであると思います。

 

 

 

www.scitecheuropa.eu