またしてもセンザンコウのウロコ大量摘発 28トン超(3万8千頭相当)が密輸される
こちらの写真は、大量に収穫された農作物を写したもののように見えます。
(Scales from 38,000 endangered pangolins found in Singapore - The Washington Post)
しかしこれはすべて密輸されたセンザンコウのウロコです。
(Scales from 38,000 endangered pangolins found in Singapore - The Washington Post)
(Second major haul of pangolin scales raises extinction fears)
2019年4月始め、シンガポールで二度にわたってセンザンコウのウロコが大量に摘発されました。 アフリカのナイジェリアからベトナムに輸送される途中、シンガポールの税関で見つかったものです。
ひとつは生薬のラベルが貼られたコンテナに14.2トンのウロコが入っているのが発見され、その5日後、さらに14トンのウロコが別のコンテナに詰め込まれているのが発見されました。
今回の摘発は、大規模な不法取引を裏で操っている国際組織にとって大きな痛手となったと見られています。
しかし同時に、この規模の取引がいまだに行われていることがハッキリとした事件でもあったのです。 合計28トン以上に及ぶ大量のウロコも、裏取引で扱われている総量と比較すればごく一部にすぎないだろう、という見方も出ています。
これだけ大量のウロコが密輸されているということは、そのために殺害されたセンザンコウもまた相当な頭数だったということを意味します。
今回シンガポールで摘発された密輸の場合、そのウロコの量から推測して3万8千頭のセンザンコウが殺害されたと見られています。 その種類も色の白い「キノボリセンザンコウ」や地上で暮らす「オオセンザンコウ」など4種類にわたり、すべてアフリカに生息しているセンザンコウたちです。
センザンコウはアフリカやアジアに生息する動物で、世界でもっとも違法取引されている動物であると言われています。
捕獲・殺害される目的はウロコだけではありません。 その肉を食べるという習慣もあり、これは特にベトナムや中国ではある種のステイタスを表す食材とみなされているそうです。
またウロコは漢方薬として使われており、皮膚病やリュウマチ、喘息の治療に効果があり、健康な母乳にも役立つと信じられています。 しかしあくまでもそう信じられているだけで、科学的な根拠は何も提示されていません。 実際のところ、センザンコウのウロコはケラチン質ですので、人の爪と同じ成分でできているにすぎないのです。
アフリカで密猟に関わっている人たちは、センザンコウの密猟がいいお金稼ぎになることを知っています。 一説によるとセンザンコウ1頭を捕獲して売ることが出来れば、一年分の給料と同額の金が手に入るともいわれています。
センザンコウはワシントン条約で売買取引されることが禁じられていますが、それにもかかわらずこの10年間で100万頭が密猟されてきたと見積もられています。 今回大量摘発があったシンガポールはワシントン条約加盟国で、野生動物の違法な輸出入に対しては最高で50万ドルの罰金、または懲役2年が定められています。
近年になり、このセンザンコウが絶滅危惧種であるということがようやく広く知られるようになりました。
このブログの記事「「センザンコウ」って何者? 意外と知られていないこの絶滅危惧種について学ぼう」にも多くの方にアクセスしていただき、もしこの動物の存在に目を向けるための一助になれたとすれば嬉しい限りです。 しかしこの記事の投稿(2016年9月)から3年近く経過していますが、センザンコウを取り巻く環境は事実上ほとんど変わっていません。
ジャッキー・チェンも2017年に下の動画に出演し、世界でもっとも名の通っている中国人の一人としてセンザンコウの保護をこう訴えています:
「今までセンザンコウが密猟者から身を守る唯一の方法は体を丸めることだけでした。しかし今、すべての種が法によって保護されています。ですから、センザンコウの肉やウロコを絶対に買わないでください。買うことをやめれば、殺すことを止めることが出来るのです」。
・Scales from 38,000 endangered pangolins found in Singapore - The Washington Post
・Second major haul of pangolin scales raises extinction fears