「サイガ」という名の動物について
長く伸びた鼻や大きくて美しい目が特徴の「サイガ」という動物がいます。
かつてアジア大陸のステップ高原に数百万頭の規模で生息していたサイガは、氷河時代から生息し続けてきた動物と言われており、マンモスが絶滅する前からこの地球上に存在していたと考えられています。
特徴のある大きな鼻は、吸い込む空気を温めめたり湿らしたりする働きをするもので、乾燥地帯に生息する動物ならではの特徴といえるでしょう。
通常は30~40頭の群れをつくって生活することが知られています。
しかしこの「伝説の動物」は、過去25年ほどの間にその生息数が95%も減少し、今はロシアにわずか4,000頭のみが生息している状態になっています。
サイガの生息数減少は、ご多聞に漏れず、野生動物を闇市で売買するために行われる密猟が大きな理由の一つです。
しかし同時に、原因不明の奇妙な死に方をすることがあり、これも生息数の大きな減少の理由と考えられています。
サイガは絶滅危惧種に指定されています。 つまり扱いはクロサイ、スマトラトラ、マウンテンゴリラなどと同じですが、これらの動物よりも減り方が急激なため、絶滅の可能性が最も高い哺乳動物と考えられています。
【高い値段で売り飛ばされるオスの角】
サイガのオスには独特の角が生えています。
中国ではこの角には下熱作用があると信じられており、漢方薬の原料として重宝され高価な値段がつけられます。
1グラム3,000円以上の値がつけられ、ブラックマーケットで売買されているのです。
最近でも、中国とカザフスタンの国境付近で5,300本の密輸されたサイガの角が押収された事件がありました。
サイガは地上でもっとも足の速い動物の一つとされています。
最高で時速80キロのスピードで走るという記録も残っていますが、当然のことながら密猟者たちの銃弾から逃れることはできないのです。
この角を目的とした密猟のため、オスの頭数が激減しており、現在生息しているサイガのうち95%はメスという状態になっています。
このアンバランスは、今後の繁殖に大きな悪影響を与えてしまうことになります。
【謎の大量死】
もう一つの減少の原因は、専門家たちを大変困らせています。
2015年の春、メスのサイガとその子供たちの多くが短期間のうちに死んでしまったのです。
2015年5月、カザフスタンでは12万頭のサイガが数日間という短い間に死亡しました。
専門家たちは「クロストリジウム」と呼ばれるバクテリアが死んだサイガの鼻から発見されたため、このバクテリアが原因で死亡した、と推測しています。
このバクテリアは通常は何の害も及ぼさない種類のものですが、何らかの原因でサイガの免疫システムに異常が生じ、通常は良性のバクテリアであったものが、命にかかわるものに変異したと、専門家は推測しているようです。
動物愛護団体「IFAW」は、この動物がゾウやサイなどと同じかそれ以上に絶滅が心配されているにもかかわらず、あまり人に知られていない動物であるということが問題のひとつであると指摘し、人々の意識の高まりを訴えています。
〔参考〕
Mystery as rare saiga antelopes drop dead in their thousands | Nature | News | Daily Express