ゴリラの生息数がこれまでの推計よりも多いことが判明 これでゴリラの将来は安心か?
ゴリラの実際の生息数はこれまで見積もられていたよりも多いことが、最近発表された調査結果で分かりました。
10年間にわたって行われたこの調査では、赤道付近のアフリカ西部約9,000kmにわたる地域を徒歩でパトロールし、ゴリラが毎晩過ごす寝床を調べる方法で行われました。
調査に参加したのは世界各国から集った50名を超える専門家たちです。
彼らはニシローランドゴリラ(現在生存するゴリラ全種の99%を占める種)の生息する地域を網羅的に調査。
ゴリラの寝床の数を数えるとともに、人間や道路が周りに存在するか、森林が未開発のまま残っているかなど、ゴリラの生活に影響を与える重要な要素も調べました。
これまでの推計では、生息数は15万~25万頭だと考えられていました。
しかし今回の推計結果では36万1,900頭という数字が出されています。
今回の調査結果で、これまで見積もられていた以上の生息数が確認されたことは、ゴリラの生存に希望をもたらすものだと言われています。
【これでゴリラについては心配しなくていい?】
それでは、もうゴリラについては心配は不要であり、もろ手を挙げて喜んでいいということになるなのでしょうか?
ゴリラが今後も将来にわたって暮らし続けることができるかどうかは、やはり密猟や森林破壊が行われないことが前提になります。
こうしたことは今までと何ら変わりはありません。
残念ながら、ゴリラは過去8年の間に20%も生存数が減少しており、絶滅危惧種であることには変わりはないのです。
ゴリラは繁殖のスピードがとても遅い動物です。
出産は4年に一度しか行わず、また大人になるのも11~12年かかります。
ふつうに繁殖を続けて絶滅危惧の状態から脱するには、かなり長い時間が必要になると考えられています。
さらに、生息の確認されているゴリラのうち80%は保護区に生息していないことも、今回の調査で判明しました。
ゴリラを含めた類人猿を捕獲したり殺害したりするのは、すべての国で違法行為とされています。
しかし都市部が拡大している国では、食用肉として売り飛ばすために類人猿の密猟が横行しています。
密猟者たちがゴリラの家族を発見し襲い掛かろうとすると、ゴリラのオスは自分の家族を守ろうとしてメスや子供たちの前に出て、密猟者と直接対立します。
卑怯な密猟者たちはそんなオスをライフルで撃つという汚いやり方で殺してしまうのです。
こういう密猟者たちを追い払うことができるのは、保護区内を巡回している監視員たちで、彼らの活躍は重要な役割を果たしています。
しかしこうした保護区で暮らすゴリラは、全生息数の2割にとどまり、そのほかのゴリラたちは日々密猟者たちのターゲットになる危険と背中合わせで日々を送っています。
ほかにも近年ではエボラ出血熱が類人猿たちにも広まり、これも生息数を大きく減らす原因となりました。
またアフリカの国によってもゴリラ保護政策に違いが出ています。
ガボン共和国は国レベルで進んだ保護政策を実施していますが、内戦に苦しむ中央アフリカ共和国はゴリラの保護にほとんど力を注げない状況です。
【その他のゴリラたちも絶滅の危機に】
今回の調査でデータが更新されたのはニシローランドゴリラの生息数36万頭ですが、その一方ヒガシローランドゴリラはわずか3,600頭しか生存しておらず、過去20年で75%という急激な減少をしています。
マウンテンゴリラはさらに少ない800頭ほどと言われています。
このヒガシローランドゴリラとマウンテンゴリラを分類する「ヒガシゴリラ」は、2016年に「絶滅寸前」に指定されました。
またニシローランドゴリラと同じ「ニシゴリラ」に属するクロスリバーゴリラという種は、もっとも少ない200~300頭と言われています。
今回、実際の生息数が多いことが判明したのはとても良いニュースですが、ゴリラたちを取り巻く状況は今まで通り安心できるものではありません。
ゴリラたちの保護は、これからも続けなくてはいけないのです。