犬や猫だけではない 類人猿もコロナと無関係ではないという専門家の指摘
すでに動物への感染例が報告されている新型コロナウイルス感染症ですが、4月29日にも米CNNで「犬が新型コロナ陽性、米国初の事例か 飼い主の家族感染」という報道がありました。
犬が新型コロナ陽性、米国初の事例か 飼い主の家族感染 https://t.co/jENEW0V2Dr
— cnn_co_jp (@cnn_co_jp) April 29, 2020
ニュースの要点は以下の通りです。
- 米ノースカロライナ州で新型コロナウイルスに感染した家族の飼い犬が検査で陽性反応を示した。
- 検出されたウイルスはごく少量。ほかの動物や飼い主に感染を広げる可能性は低い。
- 家族の症状がピークに達していた頃、犬も1~2日のあいだ軽いせきをしたり、1日だけ朝食のえさを食べなかったが、急を要するような異変はなかった(この症状が新型ウイルスによるものだったかどうかは不明)。
- 動物の陽性反応としてはこれまでにニューヨークで猫2匹と動物園のライオンやトラ、香港で犬2匹の例が報告された。
- 専門家らは、今のところ動物を介した感染拡大の形跡はないとしている。
私たちが日常接するペットについては、今のところ一定の注意を払う必要はあるものの、あまり心配をしすぎる必要はないようです。
しかしコロナウイルスが影響を与えるのは犬や猫だけではありません。 大型類人猿にも脅威をもたらす可能性があると、専門家は警告しています。
人間と同じ呼吸器系の疾患にかかりやすい
ここで「大型類人猿」と呼ばれているのはボノボ、ゴリラ、オランウータン、チンパンジーの4種で、分類上私たち人間に最も近い "親戚" です。
もちろん人間とこれらの動物たちが言語や社会を共有しているわけではありませんが、たとえばチンパンジーと人間はDNAの約98%が同じであることが証明されています。
そして、もう大きな類似点があります。
それは同じ呼吸器系の病気にかかりやすいということです。
さらに、人にとっては軽い症状の病原体であっても、大型類人猿が感染すると中程度~重度の症状につながることも知られています。
しかし上記の犬や猫の場合と同じく、新型コロナウイルスについては(少なくとも今のところは)大型類人猿にどんな影響を与えるかは分かっていません。
問題なのは、大型類人猿の4種すべてが絶滅の危機に瀕しているということです。
ゴリラもチンパンジーも家族で集まり群れをつくって暮らしていますので、万が一感染症が広まってしまうと、生息数そのものに大きな影響を与える可能性もあるのです。
単なる「自粛」では別のリスクが高まる
新型コロナウイルスから大型類人猿たちを守るためには、いわゆる「アニマル・ツーリズム」(野生に暮らす動物たちを見るために旅行者たちが生息地である森林を訪れるもの)は中止されるべきである、と専門家たちは訴えています。
またこうした旅行産業とは別に、研究者たちが行う現地調査についても最小限に縮小されるべきだと指摘されています。
ワシントンポスト紙によると、ガボンやルワンダなどではすでに観光を中止しており、フライトをキャンセルし国境を閉鎖することで、これらの地域への旅行が減少しているといわれています。
しかし、こうした「自粛」は単にやればいいというものではありません。
人間が大型類人猿たちと距離を取ってしまうことで、逆に引き起こされてしまうリスクがあるからです。
大型類人猿たちは常に密猟の危機にさらされており、もし近くにいる人の数が減ってしまうとそれだけ密猟の犠牲になる確率が高くなることが指摘されています。
たとえ人が最優先でも動物たちを忘れない
大型類人猿と新型コロナウイルス感染症については、現時点ではまだ明らかになっていないことがたくさんあります。
しかし専門家たちは、大型類人猿もコロナウイルスに感染しやすいと考えておく方が安全だ、と述べています。
新型コロナウイルスは犬や猫でも感染するウイルスですから、犬や猫よりもはるかに人間に近い体をした類人猿たちが感染しても不思議ではありません。
大型類人猿たちをウイルス感染から守るためには、やはり人間との接触を最小限に抑えることが求められるということです。
上記のようにチンパンジーやゴリラなどは常に密猟の危機にさらされており、森林監視員などによって見守られる必要があります。こうした仕事に携わっている人たちは、どうしても大型類人猿たちから離れることができない重要な任務を帯びていわけです。
彼らについては動物から少なくとも7メートル、できれば10メートル離れておく必要がある、という具体的な指針も出されています。
また病気の人や過去14日間に病気の人と接触したことがある人は、動物たちへの接近が許可されるべきではない、というガイダンスも出されているようです。
現時点ではどの国でも人間の感染対策で精いっぱいなのが現状で、もちろん最優先されるべきことです。しかしそれでも動物たちのことを忘れていいことにはなりません。
大型類人猿たちを絶滅の危機に追い込んだのは、これまで数十年間にわたる人間の活動が原因だったのです。