ヒガシゴリラ 最新レッドリストで「絶滅寸前」に 私たちがヒト科の動物について知っておきたいこと
国際自然保護連合(IUCN)が発表した最新のレッドリスト(野生動物保全状況リスト)で、ジャイアントパンダが従来の「絶滅危惧(Endangered)」から「危急(vulnerable)」へと一段階下げられたことが分かりました。
これはパンダの現状が、絶滅から一歩離れたことを意味します。
かつては繁殖プログラムがうまく行かないという問題も続きましたが、近年になってからは成功が続き、また中国政府の森林保護政策も功を奏した結果、今回のうれしいニュースにつながりました。
しかしながら中国森林部の気候変動はいまだに脅威として残っており、パンダが生息している竹林のうちの3分の一以上が21世紀中になくなってしまうだろうと言われています。
現在でも野生の生息数はわずか1,864頭のみ。あくまで絶滅から一歩遠退いたにすぎないのです。
【絶滅寸前のヒガシゴリラ】
絶滅から遠退いた動物がいる一方、近づいてしまった動物もいます。
ヒガシゴリラが「絶滅寸前」に指定されたというショッキングなニュースも同時に報道されました。
ヒガシゴリラは過去20年の間に生息数が70%も減少していることが分かっています。
ヒガシゴリラには「ヒガシマウンテンゴリラ」と「ヒガシローランドゴリラ(グローアーズ・ゴリラとも呼ばれる)」とに分けられます。
ヒガシマウンテンゴリラの生息数は近年少しずつ挽回しているという情報もありますが、それでもわずか800頭のみの生息が確認されている状態です。
ヒガシローランドゴリラについては以前このブログでもご紹介しましたが、コンゴ民主共和国の戦闘地域に巻き込まれた結果、生息数が激減していました。
(「「ヒガシローランドゴリラ」というあまり知られていない種類のゴリラについて」参照)
ヒガシローランドゴリラの生息数は1980年代には2万頭ほどが確認されていましたが、現在では約3,800頭にすぎません。
1990年代初頭に発生したルワンダ内戦の際、難民たちは戦火から逃れるためにゴリラたちの生息する野生動物保護区域内に入り込んで行かざるを得ませんでした。
そこでは飢えをしのぐために、近くに生息するゴリラたちを食肉目的に捕まえていたと言われています。
またその食肉を闇市に売りさばくための密猟が、内戦の混乱に紛れて盛んに行われていたことも分かっています。
【存続の危機に直面しているヒト科の動物たち】
スマトラオランウータン、ボルネオオランウータン、ニシゴリラ、ヒガシゴリラ、チンパンジー、ボノボ、そして私たち人間の全7種が「ヒト科」に分類されている動物です。
このうちオランウータン2種、ゴリラ2種が「絶滅寸前(Critically Endangered)」に、チンパンジーとボノボの2種は「絶滅危惧(Endangered)」指定されています。
つまり、地球上のヒト科の動物のうち、人間以外はすべて絶滅の危機に瀕していることになります。
世界の人口は増えている中、私たちの親戚にあたる大型類人猿たちはどんどんその数を減らしているのです。
そしてその原因は、私たち人間が作ってしまっていることを理解し、意識しておきましょう。
人間さえ生き残ればヒト科は存続する、などという乱暴な発想は許されるものではありません。