モヘアのために毛を刈り取られるヤギたちの惨状が明らかに 複数のブランドがモヘア使用中止を決定
「モヘア(mohair)」を素材とした衣類は、世界中のあちらこちらで使われています。
モヘアにはアンゴラヤギの毛が使われますが、このアンゴラヤギを大量に飼育して、その毛を刈り取って売っている業者たちの様子をとらえた動画が世界中に大きな衝撃を与えました。
これは動物愛護団体「PETA」が南アフリカ共和国にある12の飼育場で行った調査の最中に撮影したものです。南アフリカ共和国はモヘアの原産地として世界中に輸出している国です。
大きなハサミを使って行う毛皮の刈り取りは年に二回行われます。 現地の飼育場には数多くのアンゴラヤギが狭い囲いの中に押し込められて、順番に刈り取りが行われています。
刈り取りの順番が訪れたヤギは飼育場の人たちに足や角をつかまれ、地面を引きずって運ばれていきます。
毛の刈り取りの最中、当然ヤギはそこから逃げようと一生懸命にもがきます。 飼育場の人たちはそんなヤギの上に乗っかったり、複数で押さえつけて動けないようにしている様子がとらえられています。
苦しむヤギたちの叫び声が、飼育場全体に響き渡っているのが分かります。
しかし何よりも恐ろしいのは、その場で働いている人たちがヤギたちの苦しむ鳴き声に慣れきっていて、何とも感じていない様子であることです。
狭い囲いの中に閉じ込められているヤギたちは、自分たちの排泄物にまみれた状態で暮らしています。 明らかに基本的な世話すらされていないことが分かります。
当然毛皮が汚れてしまいますが、それをキレイにするために消毒液の中に生きているヤギを歩かせ、無理やり液の中に押し込んでいる様子もとらえられています。
【従業員たちの給与体系】
ヤギたちの飼育環境がこのように極端に惨たらしい状態になってしまう一番の理由は、飼育場で働いている人たちの賃金体系にあること見られています。
彼らは時給制ではなく、毛皮処理をしたヤギの頭数に応じて給料の額が決められます。 より多くのヤギを処理したほうがより多くお金がもらえるのですから、ヤギたちの飼育環境などは彼らにとってはどうでもいいことになってしまうわけです。
またヤギたちを管理するために、ヤギの耳に穴を開けて番号の書かれている札を付けています。
その様子も動画に収められていますが、明らかに麻酔をせずに穴を開けているため、ヤギが声を上げて体を動かし、その激痛を訴えているのが分かります。
ほかにも動画の中では、「使い物にならない」と判断されたヤギがまだ生きている状態で首にナイフを入れられ、首の骨を折られて殺されている場面も出てきます。
さらにほかのヤギたちは食肉処理場へ運ばれ、電気ショックで気絶させたうえで首にナイフを入れて殺害し、内蔵を取り出し、皮をはぎ取る、という様子も動画に収められています。
私は、この場面を最後まで観ることができませんでした(あまりにも残酷な動画なので、この記事にも貼り付けないことにしました)。
さらに今回の調査では、25%のヤギたちが一度も毛の刈り取りをされないまま死んでいることも判明しました。
上記のような酷い生育環境がその死因と見られています。
また刈り取りが一度だけ行われただけですぐに死んでしまうヤギの頭数もかなりの数にのぼります。
ヤギたちは毛皮に覆われた状態がふつうの状態です。 たとえ皮膚を傷つけずに毛が刈り取られたとしても、本来であれば隠れているべき皮膚が露出してしまうため、極度の温度変化に耐えられず死んでしまうのです。
飼育場で働いている人が明かしたことによると、ある週末に極端に気温が低くなった時には、いっぺんに4万頭のヤギが死んだこともあったそうです。
【モヘア使用を中止するブランド】
しかし、この告発動画の影響で前向きなニュースも聞こえてきました。
このショッキングな動画が出されて以来、モヘア使用に対する批判が高まったため、著名なブランドがモヘアの使用中止を表明したのです。
アルカディア・グループ(TOPSHOPなど)、H&M、インディテックス(ZARA)、GAPなどがすでに中止したか、もしくは中止を決定しています。
ほかにも今回の告発動画のはるかに前から、いわゆる「ファーフリー(fur free)」宣言をしているブランドがたくさんあります。
動物たちの犠牲によって作られた毛皮製品などがなくても、私たちは十分ファッションを楽しむことができるのです。
今後新しく服を買うときは、まずそのブランドの動物福祉ポリシーをチェックし、その上で買うかどうかを決める、ということが私たち一般消費者のできる第一歩だと思います。