観光地での「動物セルフィー」は野生動物虐待に関与することになるので注意
2017年には総ユーザーが数8億人に及ぶと言われるインスタグラム。この写真共有アプリで流行する「自撮り」は日本だけの現象ではなく、世界中に広まっています。
この “セルフィー” を野生動物と一緒に撮ることが観光客たちの間で流行っていますが、そんな行為が実は野生動物虐待につながっているという気になる指摘があります。
ブラジル北部のマナウスでは、現地のツアーコンダクターの実に94%が観光客に動物とのふれあいサービスを提供しています。 観光客たちはわずかな料金を支払うだけで、動物たちと “ふれあう” ことができます。
スマホや自撮り棒を手にした観光客たちはツアーコンダクターに導かれ、オセロット、ナマケモノ、アリクイ、アナコンダ、オオハシなどが隔離されている場所に向かいます。
そこはナマケモノを抱っこしたり、アナコンダを肩に乗せたり、オオハシを頭の上に乗せたりしながら自撮りの撮影に一生懸命な観光客でごった返しています。動物と写真を撮った観光客はその場ですぐにインスタグラムを開き、撮ったばかりの写真に面白いキャプションをつけて投稿することに一生懸命です。
そんな様子を見ているだけでは動物にとっては何の害もなさそうにも見えます。 また観光業が重要な収入源であるこの地域にとっては、たとえ少額のチャージであっても現地の観光施設の維持などに役に立つという事情もあります。
しかしこのやりたい放題の観光サービスについて、今一段と強い非難の声が上がっています。
撮影されている動物たちはこのアマゾンに「暮らす」野生の動物たちではなく、「暮らしていた」動物たちです。この観光サービスに使われるために、生息場所から勝手に連れてこられ観光施設内に隔離されているものがたくさんいます。
こういった行為のほとんどは違法に行われているといわれています。
野生のナマケモノは捕まえられると狭い施設内に閉じ込められてしまいますが、いったんこういう状態に追い込まれると、そのナマケモノの寿命は半年以上はもたないそうです。
この動画はナマケモノを生け捕りにする様子をとらえたものです。
ほかにも、鳥たちの足には腫物ができており、アリクイは心身共に虐待された兆候が見られる、と報告されています。
アナコンダは脱水症状になり、ケガも追っていました。 ワニは観光客を襲うことがないように口にゴム輪をかけて開けないよう固定されています。 オセロットはストラップを掛けられ、檻の中に閉じ込められていました。
こういう状況は、残念ながら自撮りが世界的に流行してからますますひどくなっていったようです。
2014年以降、インスタグラム上では野生動物といっしょに撮影した自撮り写真数が292%という異常な勢いで増えているのです。 これは野生動物との自撮りであって、自宅のペットとの自撮りは含まれていません。
「World Animal Protection」という野生動物保護団体では動物たちに害を与えるような自撮りはしないという「宣誓」を団体のウェブサイトで集めています。 すでに24万人がこの活動に署名しており、その数は現在でも増え続けています。
「動物たちは子供のときに業者によって連れ去られ、隠れたところで育てられ、不衛生な場所で暮らし続けることを余儀なくされているのです。こういった行為は観光客たちには見えないところで行われています」
「動物たちは毎日々々人間たちに抱きかかえられ、手で餌を与えられ続けるため、トラウマになっているのです」
「世界的な野生動物セルフィーの流行は、こういった事実上の虐待に知らずに関与してしまっている観光客によってより加速しているのです」。
これはブラジルだけの話ではありません。 タイで行われているゾウ乗り観光、メキシコのイルカと泳げるツアーなど、世界各国にこのような観光アトラクションが見受けられます。
「World Animal Protection」はこれら各国の政府に、観光産業においても野生動物保護を徹底するように訴えるとともに、インスタグラム側の担当者とも協議を行ってきました。 インスタのユーザーたちがそれとは知らずに野生動物虐待に加担してしまうことがないよう、方法を探っていくというものです。
インスタグラムの担当者はこう語っています。
「私たちは、動物たちに危害を与えるような犯罪行為を行う目的でインスタグラムを使用することを禁じています。絶滅危惧種の密猟や販売を促進してしまうような投稿については他のユーザーから通報してもらい、私たちが問題のある投稿を削除しています」
また、現在野生動物保護の専門家たちと進めている協議では、動物虐待についての情報がインスタグラムでも提供されることを目指している、とも述べています。 しかしその具体的な方法については、なんともコメントできないとも言っているようです。
日本人観光客の間では、タイでゾウの背中に乗せてもらって町中を巡る観光アトラクションが比較的人気があるようです。
現地で行われているすべてが違法操業であるとはいえませんが、合法でないものが含まれている可能性も高いようです。私たちが支払った手ごろな額の料金が、結果的にゾウの虐待につながってしまう可能性があるということは忘れないでおきたいものです。