スリランカのお祭りに駆り出された70歳のやせ細ったゾウ アジア諸国で今でも続く虐待行為
「エサラ・ペラヘラ祭」はスリランカで毎年7月に行われるお祭りです。今年は7月7日から17日にわたって開催されました。
一説によるとその起源は紀元前3世紀にまでさかのぼると言われており、スリランカの人々にとってはとても重要な祭典のようです。
このお祭りには60頭のゾウが「参加」しています。電飾の施された衣装やマスクを着せられ、開催期間中は毎日駆り出されるのです。
今年のお祭りで駆り出されたゾウたちの中に70歳のゾウがいて、人々に衝撃を与えました。
単に高齢だからではありません。そのゾウから衣装を取り外すと、体が極端にやせ細っていたからです。
ゾウの保護活動を行っている団体「Save Elephant Foundation」はこのやせ細った70歳のゾウの写真を紹介し、ゾウたちが置かれている現状を訴えました。
この団体によると、今回のお祭りに動員されたゾウは60頭に及び、夕方から夜遅くにかけて騒音・花火・煙などで満ちた大通りを歩かされ続けました。これが10日間連続で行われたのです。
大通りを練り歩くゾウは祝福の象徴になっており、スリランカでは大きな意味を持っているようです。
しかしこの70歳のゾウがここまでやせ細っていることは、見物していた人は誰も知りません。 全身が衣装に隠されていたからです。
大通りを歩く間はゾウには足かせがはめられていました。 歩幅を短くして早く歩けないようにするためです。
電飾のつけられた衣装のせいでケガをしている可能性もあるそうです。
「Save Elephant Foundation」では、大至急この「野蛮な虐待行為」をやめるようスリランカ政府に対する訴えを始めました。
スリランカの総理大臣への請願書にはすでに8,000を超える署名が集められています。
スリランカ政府は正式な回答をしていないようですが、ネット上でこの事態が拡散されたことから、お祭りの閉会式にはこの70歳のゾウは駆り出されていませんでした。
お祭りの主催者は「あのゾウは現在治療を受けている」とAFP通信に語ったということです。
しかし70歳のやせ細ったゾウのケアをすればそれでいいわけではありません。 動物を無理やり使う行事に対して、政府や主催者はもっと大きな行動を起こさないといけない、という訴えは続いています。
【信仰の自由は万人の権利。しかし・・・】
たとえ動物愛護のための主張であったとしても、他国の宗教行事に口を出すというのはきわめて難しい問題でもあります。
信教の自由というのはどの国の人にも保障されなければいけない権利で、それに伴う行事に参加することもやはり自由な権利として保障されなくてはいけないからです。
今回この写真を公表した団体「Save Elephant Foundation」も「祝典については、すべての人が信仰をもつ権利がある」と、お祭りそのものを否定してはいません。
しかしこう付け加えています。
「あくまで他の存在の邪魔をしたり傷つけたりしない限り、その権利が認められるのです。しかし他の生命を苦しませているのであれば、祝福とか聖なる祭典などと呼ぶことができるでしょうか」
【私たちに出来ること】
ゾウの虐待が行われているのはこのスリランカのエサラ・ペラヘラ祭という宗教行事だけの話ではありません。信教の自由とは異なる次元でも虐待行為は続けられています。
アジア諸国では観光客用に野生から捕獲したゾウを駆り出して酷使する、ということが今でも行われています。
ゾウは犬などと異なり、人の命令に従って動くという性質のない動物です。 そのゾウを人の思うとおりに使っているということは、ムチで打ったり、エサを使ってだましたりしながら無理やり動かしているわけで、これは紛れもない虐待行為なのです。
たとえばアジア諸国の観光地に行ったときに、ゾウの上に乗って現地を練り歩くアトラクションには参加しないということは、私たちが出来ることの一つです。
観光地でこういうアトラクションを営んでいる人たちは、ゾウたちに虐待行為をして観光客からお金を取っているのです。私たちがこういうビジネスに金を払ってしまえば、たとえ間接的であっても、それだけで虐待行為に加担したことになります。
「タイやスリランカに旅行したらやりたいことリスト」の中にこの「elephant ride」(日本では「ゾウタクシー」などと呼ばれている)を入れている人は、ぜひ考え直していただきたいと思います。
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