「動物との自撮り」はどんな場合に問題になるのか?
野生動物たちの生命を脅かすものとして「気候変動」や「生息地の減少」などが指摘されていますが、もう一つ、人間が引き起こしてしまう問題として「動物との自撮り」というものがあります。
このブログでも2017年、2018年とこの問題を取り上げたことがありましたが、状況は今でも変わらず、むしろ懸念する声は以前よりも大きくなってきているようです。
【動物たちに与える影響】
動物との自撮りが野生動物たちに引き起こしてしまうこととして:
- 身体的・精神的ストレス
- 食生活や育児の妨害
- 出生率の低下
などがあげられます。
フラッシュはもちろんのことスマホの小さな光、人がたてる音や動きなどが、動物たちのストレスになってしまいます。
例えば、ヒナにエサを与えようと海から上がってくるペンギンを追いかけて写真を撮ろうとするような人たちまで目撃されており、これは当然動物たちの食生活・育児に大きな損害を与えていることになります。
【悪意はないはずだが・・・】
インスタグラムなどでは、こうした動物との自撮りはどんどんと増えていく一方です。
動物福祉団体「World Animal Protection」が2年前に発表した調査結果によると、動物との自撮り写真の投稿数は2014年から2017年にかけて292%の上昇を見せています。 そのうちの4割が野生動物に抱き着いたり触ったりなど、適切ではない接触をしているものでした。
逆に「適切」とみなされるのは、人が動物と接触していない、または写真を撮りやすくために動物が檻に入れられたり首輪でつながれたりしていない、という条件を満たしているものです。
おそらくこうした写真を撮って投稿した人たちは、動物が嫌いだから意図的に嫌がらせをした、ということではないでしょう。 むしろその逆で、動物が好き、少なくとも興味があるからこそこうした行動をしてしまうのだと思います。
問題なのは、その行動が動物たちにどんな影響を与えているかを知らない、またはそれをネット上に公開することで見た人にどんな影響を与えるか理解していない、ということなのです。
【ガイドライン】
動物福祉団体「World Animal Protection」がウェブサイトで提案しているガイドラインがあり、比較的シンプルで分かりやすいのでここにご紹介します(「The Wildlife Selfie Code | World Animal Protection International」)。
もし国内・海外旅行に行って動物と自撮りをするチャンスがあったとしても、それが動物への虐待行為になっていないかどうかは自分で判断しなくてはいけません。そのとき、分かりやすい手がかりになると思います。
✖動物との自撮りをしてはいけない場合
- 動物たちが人に抑えられていたり、抱かれていたり、つながれている場合。
- エサでおびき寄せられている場合。
- 動物たちが人に危害を加えてしまう可能性がある場合。
〇動物と自撮りをしても問題ない場合
- 動物と安全な距離を保っている。
- 動物が自然の生息地にいる。
- 動物が自由に動ける状態であり、人によって捕獲・飼育されていない。
【ネットでシェアされる力を前向きな目的で】
また動物愛護に従事する専門家たちの中には、逆にこのネットでシェアされる力を前向きに利用することを考える人たちも出てきました。
動物との自撮りが広まることで、野生動物保護の意識が高められるという可能性を模索しているのです。
その一つとして、野生動物たちとの安全な接し方について、いわゆるインスタのインフルエンサーたちに拡散してもらう、ということも検討されているようです。
出典:
・'It's scary': wildlife selfies harming animals, experts warn | Environment | The Guardian
・'Wild animal selfies': charity condemns trend following Amazon investigation | Travel | The Guardian