「ソレノドン」ってどんな動物?恐竜時代から生き延びてきた食虫動物が絶滅の危機

ソレノドン」という動物を知っている人は果たしてどれくらいいるでしょうか?

 

名前を聞いだだけではどんな動物なのかすら想像できませんが、大きな分類では「トガリネズミ目」に属する哺乳動物です。

 

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大きさはウサギくらいで、現在は南米のキューバイスパニョーラ島ドミニカ共和国とハイチのある島)に生息しています。

 

その生態などを調べていくと、独特な存在感のある動物であることが分かります。

 

 

 

1. 食虫動物

ソレノドンは虫を主な食べ物としています。

特徴のある伸びた鼻を虫の巣の中に突っ込み、獲物を捕らえます。 また朽ちかけた木を強い爪を使って掘り開けてゆき、その中にいる虫をとらえることもあります。 ほかにも植物の根や果物などを食べることもあるそうです。

 

2. 毒をもつ哺乳動物

歯から有毒の体液を出すという、哺乳動物の中ではきわめて珍しい習性を持っています(有毒の体液を持っている哺乳動物はカモノハシやスローロリスなど、ほかにも数種存在します)。

ソレノドンの歯には毒を分泌する腺があり、この毒には獲物である虫を無力化してしまう機能があります。歯の一部には溝がついていて、この溝を伝って毒が獲物に注入されます。なお、ソレノドンという名前は「溝のついた歯」という意味のギリシャ語から来ているそうです。

 

3. 繁殖

子供を産むときは同時に3頭まで産むことがありますが、そのうちの2頭までしか生き延びません。 理由はメスの乳首が二つしかないからです(人を含めた類人猿も乳首は二つしかありませんが、例えば牛などを例に挙げればわかるように、哺乳動物で3つ以上乳首のあるものは珍しくありません)。

また乳首がお尻の近くにあるという特徴もあります。 赤ちゃんは生まれてから数か月間お母さんの体にくっついて育っていきますが、これはモグラハリネズミといった食虫動物と比べると長い期間です。

 

4. 機敏に動ける動物ではない

夜行性のため、昼間は穴倉に潜って暮らしています。

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夜行性の動物によくある特徴ですが、このソレノドンも視覚があまり発達しておらず非常に小さい目をしています。 一方で嗅覚、触覚、聴覚が発達しており、これらの感覚が視覚の代わりを果たしています。

すばやく走ることはできますが、まっすぐ進むことが出来ず、走るときはジグザグを描くように進みます。 木や岩を上ることは出来ますが、ジャンプして飛び移るという能力はありません。あわてると頭から倒れるように転んでしまうこともあり、あまり機敏に逃げ回ることはできないようです。

また天敵たちに追いかけられると、いったん止まり、様子を見てから逃げ出し、身を隠すときも頭だけを穴に隠すという隠れ方をするため、天敵たちにとっては比較的捕まえやすい動物なのです。

 

 

 

【恐竜時代から生き延びてきた】

このようにソレノドンは珍しい特徴がいくつもある動物ですが、最も注目すべきことは、この動物が地球上にすでに7000万年以上にわたって生息し続けてきたということです。

 

かつてはソレノドン科に属する動物はほかにも存在しましたが、すでに絶滅しています。 そして今でも生き残っている2種も、絶滅の危機に瀕しているのです。

 

いわゆる「恐竜時代」から生き延びている動物はこのソレノドンしか現存しないと言われており、進化の過程を解明するという意味でもきわめて重要な存在なのです。

 

恐竜時代から生息していたということは、恐竜を絶滅させたとされる隕石の衝突や、その後地球全体を襲った氷河期も生き抜いてきたことを意味します。

 

冒頭で述べた通り、ソレノドンキューバイスパニョーラ島に生息していますが、隕石衝突のころには現在のメキシコあたりにも生息していたと考えられています。 メキシコはまさに隕石が衝突した場所であると言われています。 恐竜を絶滅させるほどの巨大な隕石衝突をソレノドンがいかにして生き延びたのか、今でも分かっていません。

 

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【人が持ち込んだ外来種に駆逐される】

これほど生命力のあるソレノドンが、現代では絶滅の危機に追いやられているのです。 これは、ソレノドンの生息地に天敵の動物たちが繁殖し住みついたため、駆逐されてしまったことが原因であると言われています。

 

ソレノドンの天敵は野良犬や野良猫、そしてマングースです。 野良犬や野良猫はもちろん人が持ち込んだ動物ですし、マングースもかつては南米には生息していなかった動物ですが、やはり人間たちがヘビなどを捕まえさせるために国外から持ち込んだ動物でした。

 

人が自分たちの都合で持ち込んだ動物が住みついてしまった結果、隕石衝突や氷河期を生き延びた動物までも絶滅危惧種に追いやるという事態になってしまったのです。

 

ソレノドンという動物は、人の活動が自然の動物たちに与えてしまう悪影響を象徴する存在でもあると言えるでしょう。

 

 

 

出典:

The Creature Feature: 10 Fun Facts About the Solenodon | WIRED

Dinosaur-surviving mammal endangered by stray dogs | Environment | The Guardian

Save the polar bears, of course … but it’s the solenodons we really need to worry about | Environment | The Guardian