ウーパールーパーを絶滅の危機に追い込む二つの原因とは?

 

ウーパールーパー(アホーロートル(axolotl))はそのピンク色の身体とほほ笑んでいるような可愛らしい顔つきから、一時期はペットとして日本でも人気を博しました。

 

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https://daily.jstor.org/the-race-to-save-the-axolotl/

 

 

 

メキシコでは国民的なシンボルのように親しまれ、世界各地でも水族館やペットとして愛されています。

 

日本では唐揚げとして出す食堂もあるそうです。

 

また科学実験でも頻繁に使われる動物として知られています。

 

ウーパールーパーは脚や尻尾などが切り落とされてしまっても再生させることが出来る動物です。たとえ心臓であっても一部分であれば再生し、そこに傷が残ってしまうことすらないといわれています。

 

科学実験で頻繁に使われるというのは、この脚や尻尾が再生するという特色のために生体実験で用いられているからです。

 

【絶滅の危機】

体中が再生するという事実を聞くと、まるでウーパールーパーが不死身の動物であるかのように感じてしまいますが、実はこの動物もまた絶滅の危機に瀕しています。

 

野生では、メキシコの首都メキシコシティにある「ソチミルコ」という場所だけでしか生息が確認されていません。

 

13世紀にアステカ文明が現在のメキシコに運河を作り上げましたが、ウーパールーパーはその運河で生息し続けていたことが分かっています。

 

しかしその後の数百年にわたり、人による開発が進むにつれてウーパールーパーたちの生息地も縮小してゆきます。 加えて水質汚染も深刻となり、当然のことながら生息数も減ってゆきました。

 

初めてウーパールーパー生息数の大規模な調査が行われたのは1998年でしたが、そのときは1㎢あたり6,000匹が確認されていました。 しかし2015年に行われた調査では、同じ1㎢あたり35匹にまで激減していたのです。

 

ウーパールーパーを追い込む原因① 外来種

ソチミルコではウーパールーパーの生息数が簡単に回復する様子はありません。

 

ある専門家はウーパールーパーの生息数減少には2つの大きな原因が考えられるとしています。

 

一つは外来種の魚が生息地に入り込んできたこと。もう一つは水質汚染です。

 

コイやティラピア(スズキの仲間)といった魚は、もともとソチミルコには生息していなかった魚ですが、1970~80年代にかけてこの地域に入り込みました。

 

「入り込む」と言ってもこれらの魚たちが自分で勝手に乗り込んできたのではありません。 もちろん人が運び込んできたのです。

 

しかも国連食糧農業機関が主導した、現地の食事にもっとたんぱく源を加えようという活動により運び込まれたものだったのです。

 

これらの魚は肉食動物ですので、ウーパールーパーのうちでもとくに若年のものを捕食してしまいます。

 

現地では専門家の指揮のもと、地元の漁業関係者がこれらの天敵を一掃し、ウーパールーパーの生息数が回復する余裕を与えようとするプランがたてられています。

 

他にも研究室で育てられたウーパールーパーを野生の生息地に放すという案も上がっていますが、むしろ専門家たちは野生環境の中に安全に暮らせる保護区を指定し、ウーパールーパーが自然と生息数を回復できるよう見守ることをすすめています。

 

ウーパールーパーを追い込む原因② 水質汚染

もう一つの原因である水質汚染は取り組みがもっと難しい課題です。

 

メキシコシティの下水インフラは老朽化が進んでおり、汚水処理システムから漏れ出た汚水がソチミルコの湖や運河にアンモニアなどの有毒物質を流し込んでしまっています。

 

ウーパールーパーは呼吸の一部を皮膚で行う習性があります。 こうした有毒物質を水中での皮膚呼吸により吸収してしまうため、ふだん暮らしている環境の水質に大きく影響されてしまいます。

 

このように、今まで専門家たちがウーパールーパーの生息数増加に向けた努力を重ねてきました。

 

しかしこれまでのところ、増加のみならず減少に歯止めをかけることもできていないのが実際のところなのです。

 

 

 

daily.jstor.org