「ハリネズミ注意!」の交通標識がイギリスで導入へ
このたび、イギリスでこちらの交通標識が導入されることになりました。
赤い三角形の中に描かれているのはハリネズミです。
イギリスではハリネズミが自動車道路を横断してしまい、それを車がはねてしまうという事故が後を絶ちません。 そこでこの新しい交通標識が事故の多い場所に導入されることになりました。
ほかにも山に近い道路ではリスやアナグマ、河川に近い道路ではカワウソなど、数々の小動物に対する注意を喚起する目的もあります。
【減少を続けるハリネズミ】
かつてイギリスにはハリネズミが数多く生息しており、都市部を離れれば普通に見かける小動物の1種でした。
しかしその生息数は、この20年間で大幅に減少しています。 2018年に発表された調査結果によると、最新の生息数は522,000匹で、1995年当時の3分の1まで減少しているのです。
この急激な減少の理由の一つとして、アナグマの増加が挙げられています。
アナグマはハリネズミを襲って食べてしまう天敵です。 同時に、ハリネズミのエサである昆虫はアナグマのエサでもあるため奪い合いになり、必然的にハリネズミのエサは減ってしまうことにもなります。
また住宅の整備や農地の開発が以前に比べて変化してきているため、こうした場所を生息地にしているハリネズミが追いやられてしまう、ということも起きています。
このように生息数が減少している中、さらに交通事故に巻き込まれて死亡するハリネズミも後を絶たないのです。
ハリネズミは危険を察知するとその場で体を丸めて動かなくなる習性があります。 これを自動車道の路上でやってしまうため、余計に犠牲になりやすいのです。
【人も犠牲に】
自動車道を動物が横断することで発生する事故では、動物だけが負傷したり死亡したりするわけではありません。
目の前に急に現れた動物をよけようとして自動車や二輪車が急ブレーキをかけたり、ハンドルを急に切ったりするために引き起こされる交通事故も大きな問題です。
ハリネズミなどは小さい動物ですから、近づかないとその存在に気づけないということもあるでしょう。
こうした交通事故で命を落とす人も少なくありません。 2017年には路上にいた動物(馬を除く)が原因で発生した交通事故で629人がケガをし、4人が亡くなっています。
【小さな行動の積み重ね】
イギリスの交通標識に新しい動物が登場するのは25年ぶりだそうです。 これまでもシカ、ウシ、ヒツジ、ウマなどの大型動物や、(移住性の)ヒキガエル、カモやキジなどに対する注意を促す交通標識が設置されてきました。
もちろん、交通標識だけで動物が保護されるわけではありません。
しかし今回の新しい交通標識の登場については、交通安全を訴える団体も、動物保護を訴える団体も、ともに高く評価しています。
こうした行動の積み重ねが、動物との共生に熱心なイギリスの人々の意識を高めてきたのだろうと思います。
出典:
・Hedgehogs ahead! New sign warns drivers of animals on roads | World news | The Guardian
・Britain’s hedgehog population has fallen 66 per cent in 20 years | New Scientist