パンダは生息数も生息地も増加 それでも安心できない問題とは?
(http://www.bbc.com/news/science-environment-41366274)
2016年、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストにおいて、ジャイアントパンダは「絶滅危惧(endangered)」から「危急(vulnerable)」へ危険度が一段階下げられています。
これは2011年から2014年にかけて中国政府によって行われた生息数調査の結果、2000年代の初めは1,596頭だった生息数が1,864頭にまで増加していることが確認されたことによるものです。
これは主に中国が国家を上げて取り組んだ保護活動の成果であるといわれています。
その一方で、最近発表された調査結果によると、野生のパンダの生息地は必ずしも住みやすい状態ではないことがあらためて判明しました。
これは生息地の “分割” という問題によるものです。
一体どういうことなのでしょうか?
【生息地の総面積は増加】
生息数の増加とともに、生息地の総面積も2001年を境に増加に転じていることが分かっています。
パンダが初めて絶滅危惧種に分類された1988年と2013年を比較すると、全体的に生息地となる竹林は1.7%減少しています。
しかしこの変動の内訳を見ると、1976年から2001年にかけて4.9%減少している一方、2001年から2013年にかけては0.4%の拡大がみられました。
文字通りの微増ですが、それでも生息地の面積が増加していることは大いに歓迎すべきことに違いありません。
(http://www.nature.com/news/roads-are-slicing-up-giant-pandas-habitat-1.22658)
【人によって分断されるパンダの生息地】
今回発表された研究では、中国とアメリカの専門家が共同で地理情報や衛星画像を分析することで、1976年から2013年にかけてのパンダの生息地全体に現れた変化を調査しました。
一部では森林伐採が禁止されたりパンダ保護区域が追加されたりと、好ましい変化も見られたそうです。
その一方で、かつてひとまとまりだった生息地が、小さなパーツに分割されてしまっていることも分かりました。
現在パンダが生息している四川省、陝西省、甘粛省をまたがる6つの山地では、多くの道路がパンダの住む竹林を横切るように開発されてしまっています。
加えて地震の発生、現地の人たちの住居や農業・観光施設の開発などにより、もともと一つの大きな生息地だったところが、いくつもの小さな生息地に分割されてしまっているのです。
もともと広い竹林を動きまわって暮らしていたパンダたちが、今は狭い場所でバラバラに暮らす状況に追い込まれています。
エサとなる竹林が限定されるだけでなく、ほかのパンダとの出会いがなくなるため繁殖活動が制限され、これが生息数の増加を抑えてしまうのです。
今回の研究を行った専門家の一人は、IUCNのレッドリストで危険度が一段階下げられたのは「早すぎる決定だった」と語っています。
【まだまだ安心できないパンダの現状】
現在対策として検討されているのは、小さな生息地同士を結ぶ “廊下” をつくることです。
一つの生息地から隣の生息地へパンダたちが安全に移動できるように、二つをつなぐ通路を作るというものです。
この廊下は人の歩道や車道の上または下を通すもので、現地に暮らす人と遭遇したりパンダが車と接触する事故が起こることがないように設計されるということです。
現時点ではあくまで検討段階ですが、一部の専門家はその有効性を期待しています。
日本では上野動物園でジャイアントパンダの赤ちゃんが生まれ、元気に育っている様子が連日報道されています。
テレビや動物園で見ているとパンダはとても愛らしく、まさに癒しの存在です。
しかし、野生に暮らすわずか2,000頭にも満たないパンダたちが上記のような問題に直面していることも、忘れずにいたいものです。
(出典)
Panda's habitat 'shrinking and becoming more fragmented' - BBC News
Roads are slicing up giant pandas' habitat : Nature News & Comment