ラッコの保護に奮闘する米カリフォルニアの水族館と「二ホンカワウソ」の絶滅
いわゆる「カワウソ」と呼ばれる動物には13の種があります。
しかしその多くが生息数の増減を繰り返してきました。
カワウソは毛皮目的で大量に殺害されてきた歴史があります。
また魚介類をエサとする動物であることから、漁業に対する脅威とみなされ、専用のワナで駆除されるということも起こっています。
問題なのは狩猟や駆除だけではありません。
生息地の縮小、エサの減少、化学物質の流出による水質汚濁など、カワウソたちの生活が迫害された要因は多く存在します。
漁業用の網にかかってしまう事故も頻発し、また寄生虫や伝染病も命を奪う原因となっています。
私たちもよく知っている「ラッコ」はこのカワウソの一種(イタチ科カワウソ亜科)で、やはり同様の問題に直面してきました。
【カリフォルニアラッコの場合】
1700年代から1800年代にかけては、ラッコの毛皮取引が数多く行われていた時代です。
このあいだに、全世界のラッコの生息数は30万頭から2,000頭にまで減少していました。
ラッコの毛皮は体毛密度が高く、1平方インチあたり100万本もの毛が生えており、世界でも最も高価な毛皮として扱われていたのです。
ラッコには3種類あり、その1種である「カリフォルニアラッコ」はかつて15,000頭生息していましたが、毛皮目的の乱獲のせいで1900年代の始めにはわずか50頭にまで減少しました。
【テクノロジーを駆使したラッコ保護】
カリフォルニア州にある「モントレーベイ水族館」は、1984年の開館以来ラッコの保護に力を入れてきました。
ここでは現在、保護されたラッコを育成し海に放すプログラムを運営しています。
館内には最先端の設備を整え、またラッコにとりつけた送信機を使って海の中での動きを追跡する機能も備えられています。
保護されたラッコには専用の集中ケアユニットが用意されており、フィルター処理された海水が満たされている水槽で手厚い世話を受けます。
ここでは最大10頭のラッコを同時に保護することができるそうです。
ケアを終え海に戻ったラッコについては、無線を使ってモニターできるようになっています。
ラッコに取り付けられるモニター用の送信機はバッテリーで動く仕組みになっており、このバッテリーは少なくとも2年間にわたって使えるようになっています。
幼いラッコが大人になり、自分たちで子供を産めるようになるまでモニターすることができるわけです。
また水族館ではこの送信機から送られてくるデータを分析し、海に帰されたラッコが海洋生態系にどのような影響を与えるのかチェックを続けています。
現在カリフォルニアラッコの生息数は、3,000頭にまで増えました。
これもモントレーベイ水族館をはじめ、保護のための法整備や保護団体、チャリティー団体による積極的な活動のたまものです。
【二ホンカワウソは絶滅】
カリフォルニアラッコの喜ばしいエピソードの一方、私たちは「二ホンカワウソ」のことを思い出す必要があるでしょう。
1979年に目撃されて以来、正式に生息確認ができないまま2012年に「絶滅種」に指定されています。
こちらは2012年8月のニュース映像です。
このニュースでも「毛皮採取を目的とした乱獲」や「水質の悪化」をこの動物を絶滅に追いやった原因(の可能性)として指摘してます。
自分たちが迫害してしまったラッコたちの生息数回復に向け、懸命の努力をしているアメリカの例がある一方、日本では迫害したまま絶滅にまで追いやってしまった、というとても残念な過去があるのです。
二ホンカワウソは環境省による絶滅種指定の後も、正式な確認はされていないものの、目撃情報が多く寄せられていると言われています。
もし、二ホンカワウソの存在がもう一度確認されるようなことがあったら、カリフォルニアの水族館がラッコに施したような保護活動が行われることを期待したい、という願いを持たずにはいられません。