アルメニアで横行している "飼育" に見せかけたクマの虐待
以前、動物保護団体「インターナショナル・アニマル・レスキュー」がアルメニアの “動物園” からクマの救出に成功した、というニュースがありました。
“動物園” と言っても名ばかりで、単に動物を狭い檻の中に閉じ込めて客引きのための見世物にしているだけでした。
このクマがどれくらいの期間にわたって檻の中に閉じ込められていたのかは、よく分かっていません。
最初に発見されたとき、クマの年齢は5~6歳と見られていました。 しかしその歯を確認すると実際はもっと歳をとっていることが分かりました。
年齢のわりに体が小さすぎたせいで、実際よりも年少に見えたわけです。 つまり栄養不足のせいで体が十分に発達していなかったと考えられます。
クマたちは狭い檻の中の同じ場所をただ行ったり来たりしていした。中には頭を壁に打ち付けたり無暗に金網を上ったりして、明らかにストレスをため込んでいる様子を見せていたのです。
この救助活動では、合計3頭のクマが助け出されました。
どうやらアルメニアでは、このような「飼育」に見せかけたクマの虐待が横行しているらしいのです。
(Moment abused bear feels sunshine for the first time in years | Metro News)
【ピーターの場合】
別の救助活動で助け出されたクマの「ピーター」は、鎖につながれ檻に入れられていただけでなく、その状態で暗い倉庫の中に閉じ込められていたため、昼か夜かも分からないまま毎日を過ごしていました。
救助される前のピーターの状態をとらえた映像です。
救助されたピーターは、現在は保護施設の清潔で広い檻の中で暮らしており、専門の獣医師による時間刻みのケアが続けられています。
長期間にわたり無残な状態での生活を強いられていたピーターは、救助された後も非常に凶暴で、またほかのクマに対しても用心深い様子でした。 しかし少しずつ新しい環境にも慣れ、最近は心を開き始めているそうです。
救助されてから健康的な食生活を始めたおかげで、ピーターは4週間で50キロほど体重を増やしました。 それくらい今までは栄養が足りていなかったのです。
ニンジンやリンゴが大好物だそうですが、小さな檻の中に閉じ込められていたときには口にしたことすらなかったはずのものです。
こうして元気になっていくと、次は保護施設の内部で放し飼いされることになり、(おそらく生まれて初めて)自由に外を歩くことが出来るようになるのです。
(Update on Peter the bear! | International Animal Rescue)
【すべてのクマの救出を目標】
アルメニアでは毎年150頭以上の野生のクマたちが違法に捕獲されていることが分かっています。
捕獲したクマたちは主に観光客用のアトラクションとして見世物にされる場合がほとんどです。 レストランなどが、人の目を引くために鎖につないだクマを狭い檻の中に閉じ込めておく場合が多いようです。
これらのクマたちは、もともとはアルメニア国内の山に暮らす動物です。 山を歩き回って、自然の果物や昆虫などを食べて暮らしているはずの動物なのです。
そんなクマたちをこの状況に追い込んでしまえば、当然身体的・精神的に大きなダメージを負ってしまいます。
またピーターのように、十分な食べ物を与えられていないクマたちも多く発見されています。
「インターナショナル・アニマル・レスキュー」ではクマ救助のプロジェクトを立ち上げ、最終的にはアルメニアで苦しんでいるすべてのクマを助け出し、獣医による診察と必要な手当てをしたうえで、野生で生活できるようになるまでリハビリを受けさせることを目標にしています。
また中には保護されるまでに受けたダメージが大きすぎて、野生に戻ることが出来なくなっているクマもいるそうです。 そういうクマたちは専門家がケアをする保護施設に収容し、そこで可能な限り自然に近い状態で過ごしてもらいたい、としています。
(Armenia Bear Rescue | International Animal Rescue)