悪質ブリーダー/ペットショップの取り締まり イングランドで子犬・子猫の販売を禁ずる「ルーシー法」
このたびイギリスのイングランドで「ルーシー法」と呼ばれる法律が事実上成立しました。
これにより、イングランドでは生後6か月以下の子犬・子猫を(オンラインを含む)ペットショップで販売することが出来なくなります。
【ネット上ではウソの情報でペット販売のケースも】
2015年、イギリスのある家族がウェブサイトで生後9週間の犬を購入し「マックス」と名付けることにしました。
しかし、ネットで売り出されていたときには「キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル」と「プードル」のミックスとされていましたが、実際に飼い主のもとに届けられたのはまったく別の雑種でした。
さらに、この犬はある病気を抱えていることが判明しました。
マックスは食べ物を食べることが出来ず、ただ液体を飲むことしかできないのです。
飼い始めて間もなく、マックスは動けなくなってしまいました。 床の上に突っ伏したまま頭を上げることもできず、その様子は「まるで濡れたブランケットが置いてあるようだった」そうです。
獣医師の診察の結果、マックスは「巨大食道症」と診断されました。 これは食道の一部が大きく広がってしまい、そこに食べ物が溜まってしまうため、ものを食べても胃まで取り込むことが出来ない症状です。
飼い主さんはネットで販売していた業者に連絡しましたが、無視されたままでした。
マックスには特別なケアが必要です。飼い主さんは流動食を食べさせることが出来るよう、勤務先の出勤時間を変えざるを得ませんでした。
また口に入れたものを消化できるように特別なイスを作ってあげました。
(食事中のマックス)
ネットで販売していた業者がこのイヌの年齢や種類、健康状態やワクチン接種歴を偽っており、それにだまされたのが原因だったのです。
巨大食道症は手術で治る場合もあるらしく、マックスはその可能性を待ちながら優しい飼い主のもとで一生懸命生き続けています。
【無責任なブリーダーの犠牲】
冒頭にふれた「ルーシー法」というのはルーシーという名前の犬にちなんだ呼び方です。
マックスの場合は無責任なオンライン・ペットショップが原因でしたが、ルーシーは無責任なブリーダーの犠牲になった犬でした。
ルーシーは5歳のキャバリア・キングチャールズ・スパニエル犬で、2013年に繁殖施設から救出されました。
長期間にわたり狭い檻に入れられていた影響で、背骨の変形やてんかんといった健康問題を抱えていました。
さらには自分の排泄物といっしょに寝起きする生活が続いたため、皮膚が炎症を起こしており、また救出されたときにはすでに妊娠できない体になっていたことも分かっています。
こうした数々の症状が原因で、ルーシーは2016年に死亡しました。
生前のルーシーを引き取りその最期まで看取ったのは、リサさんという愛犬家の女性でした。
ルーシーは生まれてから引き取られるまでの5年間にわたり無残な状態で苦しみ続けましたが、最後の3年間は優しい飼い主に可愛がられて暮らすことが出来ました。
【ルーシーの死を無駄にしない】
ルーシーの死後、リサさんはこうした犬たちの惨状を訴え「puppy farming」(「子犬農場、子犬工場」=子犬を大量繁殖させるブリーダー産業のこと)を禁止する法律の制定を求めて活動を始めました。
この活動には15万人を超えるサポーターたちが賛成の署名をし、2018年5月には国会での審議にこぎつけました。
このたび、このルーシー法が可決されたことにより、イングランドでは生後6カ月以下の子犬や子猫の販売が禁止されることになるのです。
リサさんは「ルーシーの苦しみが無駄にならなかったことは大きな安らぎを与えてくれます」と語っています。
ウェールズでも「ルーシー法」の導入を求める運動が行われ政府が調査開始を表明、またスコットランドでも「puppy farm」を禁止する法案が今年5月に提出されるなど、イングランド以外の地域でも同様の動きが始まっています。
(出典)
Lucy's Law: The story of the dog that sparked a campaign - BBC News