クマに「助けられた」3歳の男の子の話 果たしてクマは人を守ろうとするのか?

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日本でも一部メディアで報道されましたが、米ノースカロライナ州で行方不明になっていた3歳の男の子が2日後に無事発見されたというニュースがありました。

 

この男の子が救助された後、「森の中で救助を待っているあいだクマが一緒にいてくれた」と証言していることが報じられ、話題になっているのです。

 

ケイシー君(3歳)は1月22日、おばあちゃんの家の裏庭で遊んでいたまま行方不明になりました。気温が0度を下回るなかケイシー君の子の身の安全が危ぶまれましたが、二日後の24日に発見されました。

 

発見時には水を欲しがり、泣きながらお母さんに会いたがっていたということですが、数か所のかすり傷を負っただけで大きなケガはなかったということです。

 

ノースカロライナ州にはたくさんのクマが生息していますので、2日間森の中にいればクマに出くわす可能性もあります。 しかしクマはケイシー君を襲わず、寒さから彼を守って2日間をともに過ごしてくれた、と救助された本人が語っているのです。

 

ケイシー君の親戚は彼の話した内容をフェイスブックに投稿し、「神様が彼を守るために友達を与えてくれたのです。奇跡は起こるのです」と感動を隠し切れない言葉まで添えていました。

 

いずれにせよ、無事に発見されたことは喜ばしいことです。

 

【野生のクマと人間は仲良くなれない?】

その一方であるクマの専門家は、この少年の話を聞いた一般の人がクマと仲良くなれるなどと思わないでほしい、と語っています。 そして、これはおそらく少年の想像にすぎないのではないか、という指摘もしています。

 

モンタナ大学でクマの研究をしているクリス・サーヴィーン氏は「このような事例は聞いたことがありません。クマはふつうそんなことはしない動物です」と述べています。

 

「野生のクマは人と友達にはなれません。少年がウソをついているなどとは言いたくありませんが、彼は何かを目撃したと自分で思い込んでしまっているのです。おそらく自宅にテディベアでも持っているのでしょう」。

 

この少年が言うようなことが起こりうるという証拠は今まで見たことがない、サーヴィーン氏は述べています。

 

【クマは人を怖がるもの】

人とクマが仲間として関係を築くという例は今までもいくつか報告されています。しかしそれらは、あくまで人の手によって育てられ飼育されてきたクマとの間に成り立った関係にすぎません。

 

2016年には「ジンボ」という名のクマの動画がシェアされ話題になったことがありました。 この動画ではジンボは野生動物センターの担当者と抱き合い、さらにこの担当者に背中をさすってもらう、という様子を見ることが出来ます。

 

 

しかし、これが野生のクマの場合はまったく別の話になります。 クマには人との接触を極力避けようとする本能が備わっているからです。

 

クマはブラッドハウンド犬の3倍の嗅覚を持っているため、ケイシー君の姿を目にする前に彼の匂いを嗅ぎつけていたはずで、その時点で少年には近づかずにその場を離れて行ったと考えるのが自然です。

 

「クマは、人の体の大きさに関わらず、人を恐れるものです」

 

「もし人間の子供に近づくとすれば、捕まえて食べるため、という目的だけです。しかしアメリカグマが人を捕食することはほとんどなく、少なくともケイシー君の身には起こらなかったのです」。

 

サーヴィーン氏は「子供に対する誹謗中傷はしたくない」とことわったうえで、きっとこの話はケイシー君のファンタジーだろうと話しています。

 

「彼が一人ぼっちだったからといって、クマは憐れみを感じたりはしません。そう考えてしまうのは、人間の感覚を野生動物に当てはめようという考え方とにつながります。いわゆる “擬人観”(ぎじんかん)というものです」。

 

「擬人観」というのは、動物のみならず植物や無生物に至るまで、すべてのものに人間と同じ性質を見出そうとしてしまうものの観方のことです。

 

しかしサーヴィーン氏は、たとえどんなことであってもケイシー君がこの出来事を乗り越える助けになるのなら、それでいいだろう、と温かい言葉も付け加えています。

 

 

 

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