イルカやクジラの行動が想像以上に人間に近い 人の頭脳の発達のヒントになるか

 

 

f:id:georgekato:20171224005829j:plain

 

クジラやイルカなど海中に生息する哺乳動物たちは、以前想定されていた以上に大きい頭脳を持っていることが知られるようになりました。

 

同時に、これまで知られていた以上に効率のいいコミュニケーションを行って仲間とのつながりを保ち、お互いを理解しあっていることも分かってきています。

 

【シャチの場合】

最近、イルカやクジラたちの行動に関する研究結果を発表した英マンチェスター大学のシュルツ氏によると、シャチは数世代にわたる仲間たちで集団をつくって暮らしています。

 

その中でも高齢のシャチは情報をたくさん保有していて、若いシャチが困難に直面したときには自分の持っている情報を伝達してあげる、ということが分かっています。 例えばいつも狩猟をしているエリアに魚がいなくなってしまったときでも、次にどこへ移動すればいいかを教えてくれるのです。

 

マッコウクジラの場合】

マッコウクジラたちがある種の「流行」という概念を持っていることも分かりました。 ある年に魅力を感じて追いかけたものでも、別の年になるとあまり興味を示さない、というパターンが見られるそうです。

 

もちろんこれは私たち人間のファッションやカルチャーといった流行とは異なります。しかしその時々によって興味の対象が変わっていくという点では、人もクジラも同じようです。

 

またクジラは音声を使ってコミュニケーションを取りますが、マッコウクジラの場合はある集団が新しい「歌」を生み出し、それをほかの集団に継承していく、という習性も発見されています。

 

【イルカの場合】

イルカ同士がおしゃべりをしていることは以前からよく知られていました。

 

またイルカたちにはお互いの名前があるようで、その名前で呼び合っていることも分かっています。 ふだん近くにいるはずのイルカが見当たらないときにその名前を呼ぶ、という行動も確認されているそうです。

 

f:id:georgekato:20171224004300j:plain

 

ほかにも、イルカやクジラたちはある種の方言(または訛り)でのコミュニケーションを行い、自分の子供ではなくても子守りを手伝い、偏りのない幅広い食生活を送るなどの特徴も見出されています。

 

つまり人間以外の動物がほとんど持っていない特徴が、これらの動物には確認されているのです。

 

一方、同じく海で暮らす哺乳動物でもシロナガスクジラやホッキョククジラは、ほかの仲間たちと密接なグループを形成するということはなく、頭脳の大きさもイルカやシャチに比べるとそれほど大きくないことが分かっています。

 

【人の頭脳や行動の解明につながるか】

人はコミュニケーションができ、道具を使い、社会を形成する能力を備えていることから、進化の頂上にあるものと考えられています。

 

これまで専門家たちは、なぜ人はほかの動物たちと比べてこれほど知能が高く複雑な行動をするようになったのか、研究・議論を重ねてきました。

 

社会を形成して他者と交流してきたことがその原因であるという説や、料理をして肉を食べるようになり、その栄養摂取の過程で頭脳が大きく成長したという説など、今でもその議論は続けられています。

 

これまで見てきたように、イルカやクジラの仲間たちが持っている「社会的存在」としての特徴は人と共通していることが分かります。 イルカなどが大きな頭脳を持っているのは、人と同じくこういった社会的行動をつかさどる必要があるからではないか、という説も出てきているのです。

 

科学者たちは社会的行動という共通の能力を備えているクジラやイルカをより詳しく研究することが、私たち人間の進化や社会がどのように形成されてきたかを知る手がかりになる、と期待をしています。

 

イルカやクジラなどはふだん海で暮らしている動物であるため、私たちが目にする機会も比較的少ないと思います。しかしこういった人との共通点があることを知ると、ある意味陸上の動物たち以上に親近感を覚えるものです。

 

 

 

www.today.com