”捕鯨の国” として知られる日本 まずはクジラという動物についての知識を深めていこう

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日本が国際捕鯨委員会IWC)から脱退し商業捕鯨を始める、という報道がありました。まだ政府の正式な発表はないようですが、日本国内のみならず海外でも同じことが報道されています。

 

この話題については、までの経緯を詳しく説明している記事がたくさんあります。日本の立場とこれまでの主張、IWCや「反捕鯨国」と呼ばれる国々からの意見と批判、日本の国際法上の立場などについては、こうした記事で詳しく知ることができそうです。

 

一方、捕鯨がこれほど話題になっていながら、私たち日本人はクジラという動物のことをあまり知らないようにも感じます。

 

このブログでは、クジラについて知識を深め興味を持つことから始めていきたいと思います。

 

以下は世界自然保護基金WWF)のサイト上の情報をもとにまとめたものです。日本政府の発表でもなく、国際捕鯨委員会の主張でもない、あくまで自然保護、動物保護の立場での情報から学んでいましょう。

 

 

 

クジラについての基礎知識

すでに聞いたことのある内容も多いとは思いますが、まずは基本的な情報から。

 

  • クジラ(広く分類されるすべての種)はほぼ世界中の海洋で泳ぎ回って暮らしています。
  • 複雑な音波を発してお互いコミュニケーションをとっていることが知られています。この音波についてはいまだに分かっていないことも多いそうです。
  • シロナガスクジラ」は全長が30メートル超、体重は200トンに及びます。ゾウ33頭分という想像を超える重さです。
  • 水中で暮らしていますが、呼吸は水面上に出て行います。また哺乳動物ですので、母乳で子供を育てます。
  • 体が分厚い脂肪で覆われており、海水の冷たさを通さないようになっています。
  • イルカやシャチを含めたクジラ目の動物たちは食物連鎖の最上位にいるため、海洋環境全体の健全性のために重要な役割を果たしています。
  • 現在13種類の巨大クジラのうち6種類が絶滅危惧種に指定されています。

 

「クジラ」の種類

英語では「whale」という言葉が知られていますが、whale にはいわゆる「鯨」だけでなくイルカやシャチなども含まれます。

 

この whale(=クジラ目)は「ヒゲクジラ亜目」と「ハクジラ亜目」に大きく分けられます。

 

口の中に「ヒゲ」があり、口に含んだ海水を吹き出してひげに引っかかったエサを食べる、という食べ方をするのが「ヒゲクジラ」と呼ばれる種類です。シロナガスクジラタイセイヨウセミクジラセミクジラ、ホッキョククジラ、イワシクジラコククジラなどがこのヒゲクジラ亜目に属します。

 

おなじくクジラと呼ばれていても、マッコウクジラにはヒゲはなく歯でエサを食べるクジラで、イルカやシャチなどとともに「ハクジラ亜目」に分類されます。

 

捕鯨以外でクジラを取り巻く主な危険

 

【人間の活動】

クジラが船舶と衝突したり、沖合網に絡まってしまう事象がたびたび起こっています。

 

また、海水そのものの汚染がクジラたちにケガや病気、そして死の危険をもたらしています。

 

クジラは音波を発信してコミュニケーションをとることで知られていますが、大型船が運航していたり石油・ガスの開発が行われることが原因で、自然ではありえない音が海中を満たしてしまうため、クジラ同士のコミュニケーションの邪魔になったり、場合によっては聴覚にダメージを与えてしまいます。

 

クジラの生活へのこうした妨害は、エサを食べたり子供を育てたりする場所を奪ってしまう、移動するルートを妨げてしまう、などといった被害にもつながっています。

 

【気候変動】

海水の温暖化と北極や南極に浮かぶ海氷の減少も、やはりクジラたちの生息地やエサに影響を与えています。

 

クジラたちは小さな動植物を食べて暮らしています。しかし、気候変動で海水温が上昇し、風や潮流まで変わってしまうことで、こうしたエサのとれる場所に影響が出たり、エサそのものがとれなくなるという事象が発生しているのです。

 

ザトウクジラやシロナガスクジラなどは、エサの確保できる場所を求めて移動せざるを得なくなり、十分なエサを食べる時間がなくなるという結果になります。

 

実際に、気候変動によるエサ不足の影響で、絶滅危惧種であるタイセイヨウセミクジラの出産率が悪化しているという報告があります。

 

出典:Whale | Species | WWF

 

海洋環境改善の貢献

このように、クジラという動物は捕鯨以外でも大きな危険にさらされて暮らしていることが分かります。

 

「危険」とは言っても、もともと自然環境にある危険ではありません。人の活動が原因となって引き起こされた危険ですから、人に責任があるのです。

 

もしも日本が今後も捕鯨を続けるのなら、少なくとも捕鯨以外のところではクジラたちにとって暮らしやすい海の環境づくりのために一役買う、という姿勢があってもいいのではないかと感じます。

 

クジラという動物や人間との関係については、私たちが知るべきことが他にもたくさんありそうです。今後もその都度紹介していきたいと思います。