チンパンジーも違法取引の対象に グドール博士が訴えるその現状とメッセージ
このブログでは今まで、オランウータンの子供たちがペット目的で捕獲され違法取引の対象になっている現状を紹介してきました。
しかしこれはオランウータンだけに起こっていることではありません。
イギリスの著名な動物学者ジェーン・グドール博士によると、アフリカ中部から西部にわたる地域ではチンパンジーの子供たちをターゲットとした違法取引が急増しているのです。
【ジェーン・グドール博士】
グドール博士は過去55年間にわたり霊長類を対象とした動物行動学を研究してきました。
さらに違法取引や虐待などで苦しんでいる霊長類を救助する団体を立ち上げ、活動を行っています。
こちらは博士たちが救助・看護したチンパンジーを森へ返すときの様子を捕らえた有名な動画です。
【ユネスコのレポート】
2013年にユネスコが発表した報告書によると、2005~2011年のあいだに22,218頭の野生の類人猿が違法業者たちによって取引されたことがわかっています。
違法業者に捕獲されたチンパンジーの子供たちはアジアや中東に売り飛ばされています。
野生動物の違法取引は何十億ドルのお金が流れる「おいしい」ビジネスになっているのが実情です。
チンパンジーを食用肉として狩猟している業者もいるといわれており、通常は専用の罠で捕まえていることがわかっています。
かつてはこの罠は植物のツルを使って作られており、簡単に壊すことができました。
しかし現在はワイヤーで作られた罠が仕掛けられているため、そのワイヤーがチンパンジーたちの体に食い込んで傷をつけてしまうのです。
このため、違法業者に捕獲されたチンパンジーたちの多くは腕や脚を失っていたり、体中に切り傷を負っていたりするのです。
【グドール博士の訴え】
グドール博士とケニヤの野生動物保護団体が協力して設立した「スイートウォーターズ・チンパンジー保護区」には、親とはぐれたり虐待されたりしてきた50頭以上のチンパンジーが住んでいます。
この自然保護区に住んでいるチンパンジーのほとんどは、かつての飼い主に鎖でつながれたり金網の中に閉じ込められていました。
また、ペットとして売り飛ばされるためにアジアに向けて輸送されてゆく最中に救出されたチンパンジーたちも、おなじくこの保護区に住んでいます。
グドール博士によるとチンパンジーには人の肖像を記憶する能力があるそうです。
つまり、かつて自分を苦しめた人の顔を覚えているのです。
「アジアや中東の人たちには、チンパンジーをペットとして飼ったり、チンパンジーをおもちゃのように扱うことは間違っているのだということを伝えていかなくてはいけません」と博士は語っています。
現在82歳のグドール博士はその団体を通してこういったメッセージを若い世代に伝えることを目的に活動を続けています。
「ヒトと類人猿たちはいかに近い存在であるということを、若い世代が学んでゆくことが大事なのです」。