人に捨てられた孤独なチンパンジー それでも人に心を開く
チンパンジーの「ポンソ」(Ponso)は数年間にわたってずっと独りで暮らしてきました。
現地の村人であるジャメインさんは、そんなポンソの唯一の友達です。
いつも出来る限りポンソのいる場所を訪れ、パンやバナナなどの食べ物を与えてきました。
この小さな島で、ポンソの食糧になるのはジャメインさんの持ってきてくれる食べ物だけなのです。
最近、ギニアに本部を置く「チンパンジー保護センター」のエステラさんはポンソの住む島を訪れ、初めてこのチンパンジーに会いました。
すると初対面にもかかわらず、ポンソはエステラさんに抱きつき、明らかに喜んだ表情を見せました。
ポンソがいかにさみしがっており、仲間を求めているかを痛感させられる光景です。
しかしポンソが今まで経験してきたことを振り返ると、これほどまで人に心を許すという事実は驚きに値することなのです。
【生体実験の犠牲にされたチンパンジーたち】
「ニューヨーク・ブラッド・センター」(NYBC)はアメリカで献血に関わる業務を管理している組織です。
この組織は、過去数十年にわたってチンパンジーたちを野生の森で捕まえ、血液に関わる生体実験に使用してきました。
ポンソもそんな中の1頭で、他にも7~11歳のチンパンジー全20頭がまとめて捕獲されました。
チンパンジーたちは麻酔を打たれ、首に鎖をかけジャングルジムにつながれた状態で、肝炎の生体実験に使われました。
ポンソたちのかかわった実験が終わった後、ニューヨーク・ブラッド・センターはチンパンジーたちをコートジボアールの沖にあるこの小さな島に連れ戻しました。
その時に食料と水を与えたとも言われていますが、わずか数か月後には20頭のうち11頭が死亡。
残った9頭も、飢えと病気で次々に死んでゆき、結局このポンソとその妻、そして2頭の子供だけが生き残ったのです。
そんなポンソ一家も、2013年の終わりにはポンソを残してすべて死んでしまいました。
ジャメインさんはこんなポンソ一家の4頭をずっと面倒を見てきました。
「妻と2頭の子供を埋葬するとき、ポンソも一緒に土に埋めるのを手伝ってくれたんだ」とジャメインさんは語っています。
【2015年で援助は打ち切り】
ニューヨーク・ブラッド・センターは、ポンソの時の20頭を含め、過去に合計66頭のチンパンジーを実験で使用してきました。
しかしチンパンジーの使用は2005年に終了し、その後も生体実験に関わったチンパンジーの世話は続けていた、と主張しています。
しかしながら2015年3月、今後はチンパンジーたちへの援助を打ち切る、という発表をしました。
「リベリア政府との話し合いが決裂したことが原因」と述べています。
発表によると、リベリア政府が行うチンパンジーの保護活動と折り合いがつかなくなった、ということです。
「今まで何百万ドルというお金をチンパンジー保護につぎ込んできた」と自分たちの貢献をアピールする一方、「ニューヨーク・ブラッド・センターは、チンパンジーの世話をする義務など負っていない」とも発言しています。
【動物保護団体が保護活動を引き継ぐ】
現在はアメリカの動物保護団体がチンパンジー保護のための活動を行い、そのための募金を呼びかけています。
また「SOS PONSO」というグループは、同様の活動をポンソのために行っており、すでに2万ユーロを超す募金が寄せられているとのことです。
(Chimpanzee Ponso welcomes visitor with open arms years after he was abandoned on island)