アメリカ南部に生息する「ゴファーガメ」 その甲羅にペイントするという悪質ないたずらが発生
米フロリダ州では、心無い人たちがカメの甲羅にペイントをするという悪質ないたずらが横行しています。
フロリダ州の「魚類・野生生物保存委員会」はいたずらの対象となった「ゴファーガメ」の写真を公開しました。
今のところ被害を受けたカメは5匹発見されています。
「5匹と聞くとあまり多くは感じないかもしれませんが、このようないたずらが行われたというのは今まで聞いたことがありません」と委員会の担当者は憤りをあらわにしています。
【ゴファーガメとはどんなカメ?】
ゴファーガメの体長は25cmほど。
アメリカのミシシッピ河の東側にのみ生息する固有種です。
地面に穴を掘ってその中で暮らすという珍しい習性があります(そのため日本名は「アナホリゴファーガメ」となっています)。
穴は最も長いもので14メートルのものが発見されたという記録があります。
しかもこの穴はゴファーガメだけが使うのではなく、フクロウ、ヘビ、コオロギ、オポッサムといったほかの野生動物も「借用」することが分かっています。
そのためゴファーガメの存在は、地域の生態系全体にとっても大きな意味のあるものなのです。
ゴファーガメは絶滅危惧種ですので、その生息を妨害する行為は禁止されています。
甲羅にペイントするなどと言うのは、当然その違法行為に当たります。
委員会では、大豆をベースにしたクリーナーを使ってペンキを剥がす作業をしました。
それでも完全には元に戻らず、甲羅にはうっすらとペンキの後が残ってしまっているそうです。
これ以上の被害を食い止めるため、委員会では24時間のホットラインを開設し通報を受け付けることにしました。
【カメへの具体的な被害】
甲羅にペンキを塗るといういたずらは、単に見た目だけの問題ではありません。
リクガメや淡水に生息するカメは、日光浴をして紫外線を吸収することでビタミンを体内に取り込みます。
甲羅がペンキでカバーされてしまうと、このビタミン摂取ができなくなってしまうのです。
また甲羅はとても頑丈で水を通さないように見えますが、実際には人の目には見えない小さな穴が開いており、液体が通過できるようになっています。
つまりペンキに含まれる有害物質がその穴を通過してカメの体内に流れ込んでしまうことになるのです。
加えてペンキの刺激臭もカメに悪影響を与える可能性があります。
たとえこのような具体的な悪影響を知らなくても、この種のいたずらが許されないということは誰でも分かることです。
あえて「早く逃げることができない動物」「人に危害を与えない動物」を選んでこのような卑劣な行為をはたらく犯人には憤りを覚えざるを得ません。