南アフリカ 「“サイの角”取引の再開はサイ保護が目的」 という主張

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南アフリカフリカ共和国では2009年以降、国内で「サイの角」の取引を禁止してきました。

 

しかしこのたび「取引を解禁する」という方針を打ち出しました。

 

彼らの主張では、取引を解禁することで世界に2万匹しか生息していないサイを保護することができる、ということです。

 

この2万匹のうち80%が、この南アフリカ国内に生息していることが分かっています。

 

 

【絶えない密猟】

6年前の取引禁止にもかかわらず容赦ない密猟が続いているため、シロサイは20年以内に絶滅してしまう可能性があるといわれています。

 

南アフリカ政府によると、2015年だけでもすでに749匹のサイが殺害されています。

 

サイの角は中国やベトナム闇市場でとても高い需要があります。

 

サイの角には漢方の医療効果があると信じられており、角1キロが10万ドルの値をつけることもあるようです。

 

2008年にはベトナムの政治家がサイの角を服用したことでガンを克服した、と言う噂が流れ、売上が上昇したことがありました。

 

このとき以来サイの角は、ベトナムではガン治療の代替医療として需要が高まっています。

 

二日酔いや精力減退にも効果があると信じられており、また高価な品物であることから、中国・ベトナムなどではサイの角を所有していることは社会的なステイタスの象徴とも見られているようです。

 

 

【なぜ取引解禁?】

2014年に行われた調査の結果、サイの角の取引を合法化することで、年間7億1700万ドルの利益が見込めるという発表がありました。

 

取引解禁を求める人たちは、サイを殺さずに角だけ採取し、その後また角が生えてくるように合法的に野生で飼育して管理する方針であり、このやり方であれば生態系への影響もなくなる、としています。

 

一方、密猟者たちはまずサイを殺し、角だけを切り取って死体をそのまま捨てていく、という残忍な行為を繰り返しているのです。

 

このような背景から、南アフリカ政府は取引をあえて合法化することで、密猟を減らせるであろうと見込んでいるようです。

 

 

【保護のための取引解禁には一定の評価もあり】

国際的なサイの保護団体である「Save the Rhino International」は、以下ように語っています。

 

「私たちの主な関心事は、2009年に取引が禁止されたときにはまだ売れ残っていたサイの角の在庫が、今でもまだ余っているという事実です。この余った在庫が闇市場に流れ出てしまうため、サイの角がいまだに非合法で取引されているのです」

 

事実、2009年にサイの角取引が禁止されて以降も、1,800キロ分の在庫が「消えた」といわれています。

 

南アフリカ国内では事実上サイの角に対する需要はありません。

 

しかし南アフリカ政府は、2016年に行われるワシントン条約のコンファレンスで、サイの角取引の国際的な合法化を提案するものと見られています。

 

「Save the Rhino International」では取引解禁には反対する一方、合法的な取引をしていた人たちのサイ保護に向けた意識の高さは評価しています。

 

「取引反対を主張する人たちからの強い疑惑の声に直面しながらも、南アフリカの取引業者たちは、この数ヶ月間にわたって政府と交渉を続けてきました。国内の在庫について不正を正し、全ての角がDNA鑑定を受け、マイクロチップを付与され、重量を記録し、しっかりと在庫管理されることに力を注ぎ、サイのトロフィーハンティングに対処できるよう努力してきたことは、懸命なことだと言えます」。

 

しかし同時に、「2016年の合法化提案の可否は、闇取引に対する厳しい規制と在庫の適正な管理を南アフリカが続けられるかどうかにかかっています」と釘を刺しています。

 

 

【シロサイをめぐる現状】

南アフリカ政府はサイを保護するために軍隊を動員して来ましたが、それでも密猟を食い止めることができないままでした。

 

シロサイには「キタシロサイ」と「ミナミシロサイ」の2種がいます。

 

ミナミシロサイは20世紀初頭に保護活動が行われたため、現在約2万頭が生息しているといわれています。

 

しかしキタシロサイは、2015年11月下旬、世界に4匹しか生き残っていなかったうちの1匹がアメリカのサンディエゴ動物園で死亡したため、現在3匹のみが生存している状態です。

 

これらの動物は、生息地域の生態系にとって欠かすことのできない動物です。

 

十分な保護活動を行えば、絶滅から救うことは可能です。

 

2015年始めに発表された研究によると、地球上に生息する74種の大型草食動物のうち、44種については国際自然保護連合によって「絶滅危惧」に指定されていることが分かりました。

 

そのほとんどが発展途上国に生息しており、絶滅の危機に対する十分な保護活動が行われていない状況なのです。

 

Decision to Lift Ban On Rhino Horn Sparks Heated Debate)