ペットや食用で犠牲になっている絶滅危惧種「ホウシャガメ」の実態
2011年に行方不明になった2匹のリクガメが、2018年9月になって7年ぶりに発見されたというニュースがありました。
かつてオーストラリアのパース動物園に暮らしていた2匹ですが、パース近郊のある家で発見されたということです。
どうやら単なる迷子ではなく人によって盗み出されたと見られており、事件として警察が捜査に当たってきました。
一方この動物園では、つい最近もミーアキャットの赤ちゃんが盗まれ、その後なんとか発見されるという事件があり、そのセキュリティ体制の見直しがあらためて求められたばかりでした。
ホウシャガメのもともとの生息地はマダガスカルです。 かつてはこの島の南部の象徴的な生き物と言われたほどたくさん生息していました。
しかし今は見かけることは少なくなり、一部の地域だけにまとまって生息していると見られています。
やはり密猟がホウシャガメを絶滅の危機に追いやった大きな原因です。
その特殊な甲羅の模様が好まれペットとして人気があるため、密猟者たちのターゲットになってきたのです。
【食用で捕まえる人たちも】
ペットとして国外に売り飛ばすことに加え、密猟のもう一つの目的は、地元の人たちがカメを「食べ物」としているということです。
マダガスカルには数種類の民族が暮らしています。 そのなかでも、古くからこの島に暮らす人たちにはカメを食べることはもちろん、触れることすらタブー視する文化があるそうです。
しかしこの島に比較的最近になって移住し暮らし始めた人たちには、カメを食べる習慣があるのです。
カメの肉はとくにクリスマスやイースターの季節に人気がある「食べ物」とされています。
2003年の調査では、毎年45,000匹のホウシャガメが捕獲されていることが分かっています。 その後も現在に至るまで、この捕獲数は増え続けているという情報もあるようです。
他にも、カメにはニワトリやアヒルなど鳥類特有の病気を避ける効果があると信じられており、 ホウシャガメをペットとして捕獲して家禽用の檻の中にいっしょに入れて置く人たちもいます。
マダガスカル内の「保護区域」とされている場所には一応パトロールが行われ、大規模な密猟を防ごうとはしています。
しかしそれも十分には行われていないため、あまり効果はあげていないようです。
また農業用地開拓ために行われる森林伐採などが原因で生息地が減少していることも、ホウシャガメたちの生活を脅かしていることが分かっています。
2003年の調査では過去25年の間に生息地域が20%減少していることが判明しました。
【見えてくる違法取引】
今回7年ぶりで発見されたパース動物園のホウシャガメは無事に生きていたわけですから、食用目的で盗まれたのではないことは明らかです。
しかし地元の警察は、この2匹のカメは盗まれた直後に転売されたと見ていて、やはりこの絶滅危惧種をペットとして売買している闇市のような存在があることが想定できます。
この件では、すでに35歳の女性が窃盗と家宅侵入の罪で告発されています。
かつていっしょに暮らしていたホウシャガメと再会できたパース動物園では、この2匹が特別な世話もされずに7年間も生き延びたことにとても驚いています。
外部にいたカメが園内に伝染病などを持ち込んでしまうことがないよう、現時点では隔離して世話をしている最中で、これは保護から30日間続きます。
パース動物園の獣医師シモーヌさんも、このカメたちにまた会えるとは思っていなかったと喜ぶ一方、「動物をあたかもモノのようにあつかうのは、許せることではありません」 と怒りをあらわにしています。
(出典)
Astrochelys radiata (Radiated Tortoise)