専用の救急車でサーカスからゾウを救う インドの動物保護団体
インドの動物保護団体がゾウ専用の「救急車」を用意し、サーカスで苦しんできたゾウが最期の日々を救護センターで幸せに暮らせるように、檻の中から連れ出す活動を開始しました。
【サーカスでの長年にわたる労苦】
「ミア」と「シータ」の2頭は、インドの動物保護団体「ワイルドライフSOS」がゾウの救急車で救助した最初のゾウです。
ミアとシータにとって、この大きな救急車に乗せられてゾウ保護救護センターまで移動する旅路は、長らく待ち望んできたものでした。
2頭とも50歳を超えており、過去数十年にわたってサーカスで芸をさせられていたのです。
ミアのほうが比較的元気がありますが、白内障を発症しており、また後ろ足に炎症、つま先には腫れ物が出来ているため、ふつうに歩けない状態になってしまいました。
シータもまた、病気に悩まされています。
右前足は複雑骨折を起こしたことがあり、それ以来ひざを曲げられないままになっています。
また左前足はいわゆる過伸展(通常以上に間接が伸びてしまう症状)と腫れ物をわずらっているのです。
この状態を見る限り、シータは少なくとも1年以上ものあいだ十分な休息を与えられずに働かされ続けたと見られます。
今回ようやくサーカスから引退し、「ワイルドライフSOS」の救護センターで幸せな老後を過ごせることになるのです。
この救護センターでは熟練の獣医チームによるケアが受けられ、栄養バランスの取れたエサを与えられ、冷たいプールで涼みながら適度な運動をすることができるようになります。
【「ワイルドライフSOS」という動物保護団体の活動】
ワイルドライフSOSは過去6年間に21頭のゾウをインド全域から救助してきました。
しかし今回の「特別救急車」の登場は、この動物保護団体にとって大きな進歩になりそうです。
ワイルドライフSOSの創設者の一人はこう語っています。
「ゾウのように大きな動物を長距離にわたって運ぶのは、危険を伴う、実行しづらい業務です。しかし、ゾウの運搬に特化した救急車を取り入れたことで、長旅もゾウにとってそれほどストレスにならなくなり、私たちにとっても実行しやすくなったのです」
これまでワイルドライフSOSではトラックをチャーターしてゾウを運んでいました。
ゾウの体重は2,000~5,000kgあるため、運搬は難しく、非効率で、安全ではありませんでした。
この新しい特製救急車には自動式の傾斜路、シャワー、車内治療室なども設置されています。
「ミアとシータを私たちの保護施設に収容できたことで、現在インドのサーカスで働かされているゾウの10%以上を救助することができました」
「ワイルドライフSOSでは約1年前に、サーカスで酷使されているゾウを助けるキャンペーンを開始しました。私たちはこれまでの成果を誇りに感じています」
「しかしここで終わりではなく、インドのサーカスで苦しんでいるゾウは1頭もいないと宣言できるまで、このキャンペーンを続けるつもりです」
ワイルドライフSOSでは、インド国内に10の野生動物リハビリ施設を運営しています。
その中にはナマケグマの世界最大の救助施設や、ゾウを放し飼いにしてリハビリさせることができる「ゾウ保護救護センター」なども含まれています。
このゾウ保護救護センターでは現在15頭のゾウが収容されています。
さらにこの団体では、ゾウなどの密猟で生計を立てていた現地住民たちに、野生動物を殺さないで暮らしていける生活方法を提案をするプロジェクトも運営しているということです。