私たちはジャイアントパンダを「守りすぎ」?
ジャイアントパンダは世界的に有名な動物です。
その愛くるしい風貌だけではなく、個体数が激減し絶滅の危機に瀕する動物への意識を高めたという点でも、とても重要な存在です。
一方、ジャイアントパンダはあまりにも人気が高いせいで、ほかにも数多く指定されている絶滅危惧種に注がれる関心までも奪ってしまう、と言う人たちもいます。
ほかの動物へ幅広く分散されなくてはいけない資金や人材までが、このパンダだけに集中してしまう、という批判もあるようです。
たとえば生態系の観点から見たとき、パンダよりももっと大事な動物がいるのではないか、という疑問を呈する人たちもいます。
【人はパンダばかりを守っているのか?】
しかし、このたび専門雑誌「Conservation Biology」に掲載された研究によると、パンダを保護することは、結果的にほかの絶滅危惧動物の保護にもつながっている、という結果が発表されました。
研究者たちは両生類、鳥類、哺乳類などの中国国内の生息分布を示した地図の調査を開始しました。
彼らはそのうちいわゆる固有種(中国のみで生息が確認されている種)に注目しました。
つまり、世界中で生息が確認されているものよりも絶滅の危険度が高いと考えられる種です。
この調査の結果、中国に生息する固有種の多くは南西部の山脈地帯で確認されていることがわかりました。
ここはまさにジャイアントパンダが生息しているところなのです。
森林に生息する鳥類や哺乳類のそれぞれ70%が、このジャイアントパンダの生息地域に棲んでいることも判明しました。
中国政府や世界の動物・環境保護者たちは、まるでジャイアントパンダのみに集中しているように見えますが、実はそのおかげで、パンダ以外の動物のための保護環境がおのずと確立しやすくなっているのです。
かつて中国政府がこの南西部に新しい鉄道を建設する計画を立てていましたが、同じく中国政府の森林保護担当がこの地域に保護区を設定したため、結局のところ鉄道は別のルートに変更して建設された、という事例がありました。
基本的にはパンダの保護を目的とした森林保護区でしたが、そこに生息するほかの動物にとってもよい結果につながったのです。
【それでも他の地域・動物への関心も必要】
このようなポジティブな効果をもたらしている一方、パンダが生息していない森林については注目度が低いため、その扱いに差が出てしまっているのも事実です。
とくに両生類については、哺乳類や鳥類への関心の陰に隠れてしまう傾向があります。
研究者たちは、ほかの動物たちへの保護についても奨励するよう中国政府に働きかけてゆきたい、と語っています。