ホッキョクグマの体にスプレーでいたずら書き 獲物を狙うときのカムフラージュが困難に

このホッキョクグマをとらえた動画が最近ネットで拡散されました。 ロシアのWWF世界自然保護基金)で働くセルゲイさんがフェイスブックに投稿したものです。

 

 

ご覧の通り、ホッキョクグマの毛に何か模様のようなものが見えます。

 

T-34」と書いてあるようです。

 

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T-34」は旧ソヴィエト連邦第二次世界大戦時代に使用していた戦車の名前です。

 

ロシアでは第二次世界大戦終結した5月9日を戦勝記念日としており、この日になると「T-34」というペイントをして盛り上がる人が今でもいるそうです。

 

スプレーで書かれたことは明らかですので、人がやったいたずらと考えて間違えないでしょう。

 

この動画は、ホッキョクグマがエサ探しのために頻繁にあらわれる場所で撮られたものだと見られています。

 

今のところこの動画が撮影された具体的な場所はハッキリと分かっていませんが、専門家たちは特定を急いでいるところです。

 

ホッキョクグマは地上に暮らす最強の哺乳動物と言われており、人が手なずけることは通常できません。

 

そのホッキョクグマの脇腹にスプレーでここまではっきりと文字を書くためには、ホッキョクグマに麻酔などをかけた可能性がある、とも見られています。

 

果たして民家の近くにエサ漁りに来たことに対する抗議活動として地元住民がやったことなのか、それとも単なる度を超えた悪ふざけなのか、映像からだけでは分からないままです。

 

カムフラージュできず獲物を狙うのが困難に

動物にペイントスプレーをかけること自体がひどい虐待行為ですが、単に見た目だけの問題では済まされません。

 

ホッキョクグマの毛皮が白色に見えるのは、まわりの雪の色に同化して獲物たちに見つからないように(いわゆるカムフラージュ)になっているものです。

 

しかしこのホッキョクグマの場合は、遠目で見てもはっきりとそのいたずら書きが見えてしまうため、まわりの雪の色に同化できない恐れがあります。

 

そのため獲物を捕らえることが難しくなると見られています。

 

 

 

地球温暖化でエサを獲れず 人のいる場所に出没

地球温暖化の影響で、ホッキョクグマの生息できる海氷(北極海に浮かぶ氷の板)の面積がどんどんと縮小しています。

 

ホッキョクグマたちはこの海氷を歩いて獲物であるアザラシの生息場所に近づき、ようやくエサにありつけるのです。

 

しかし海氷がどんどんと小さくなっていくせいで獲物のいる場所にまでたどり着けないホッキョクグマたちが増えており、そんなクマたちは餓えた状態で人が多く暮らす場所に近づいてきます。

 

そこで家畜を襲ったり、貯蔵してある食料を奪ったりするため、ロシアの北部に暮らす人たちとの衝突が頻繁に起こっているのです。

 

たとえばロシア北部のノヴァヤゼムリャという場所では、2019年2月だけで50頭以上のホッキョクグマが住宅街に入り込んできたことが確認されています。

 

住宅街で暮らす人たちにとっては身に危険が及ぶ重大な事態です。

 

もしかするとここの住民たちがホッキョクグマに麻酔銃を向け、このいたずらに及んだのではないか、という推測も流れています。

 

もちろんあくまで推測にすぎず、ノヴァヤゼムリャの住民の仕業であると断定することはできません。

 

 

地球温暖化が野生動物の生活に影響を与える。すると今度は、その影響から身を守ろうとする動物たちが人の生活に影響を与えてしまう。

 

こういう悪循環がホッキョクグマだけでなく、世界のいたるところで起きています。

 

地元住民の皆さんの立場に立って考えると、やはり安全第一です。 凶暴な動物から人の身を守るためには正当防衛もやむを得ない、という状況もあるでしょう。

 

しかし動物に対するこのような悪質ないたずらは、正当防衛でも何でもありません。

 

何の解決にもつながらないことはみんなが分かっているはずなのに、それでも手を出してしまう人がいるということがとても残念でなりません。

 

 

 

www.theguardian.com