キツネ狩りは復活してしまうのか 動物愛護団体も注目の6月のイギリス総選挙

 

5月の終わり、イギリス首相官邸があるロンドン・ダウニング街でデモンストレーションが行われました。

キツネ狩りに反対する人たちが、保守党政権の政策へ抗議したものです。

 

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【イギリスの「キツネ狩り」とは?】 

キツネ狩り」というのは、訓練された猟犬に野生のキツネを追いかけさせ、さんざん追い回させた結果、最後は猟犬に食い殺させるという「娯楽」です。

 

人が猟銃でキツネを撃ち殺すことはしません。

しかし数十頭におよぶ猟犬を引き連れ、キツネに向けて犬たちをけしかけ、「犬 vs. キツネ」の争いを馬上から眺めて楽しむというものです。

 

馬や猟犬を保有する人たちなど、一定以上の資産のある上流階級の高級な遊びであるとされ、ある種のステイタスを象徴するものでもあったようです。

 

当然のことながらキツネ狩りに対しては多くの批判があり、2004年に当時の労働党政権が「Hunting Act」を可決、翌2005年からはキツネなどの野生動物のハンティングが禁止されてきました。

 

 

キツネ狩り解禁をめざす保守党政権】

しかし現在のテレーザ・メイ首相が率いる保守党政権は、キツネ狩りを禁じたこの法律の廃止に向けて動こうとしているのです。

 

イギリスでは6月8日に総選挙が行われます。

この選挙に先立ち、メイ首相はキツネ狩りを支持する立場を表明。

保守党として禁止令の見直しを選挙公約に含める、と発言しました。

  

これに対して、動物愛護団体は怒りをあらわにしています。

「馬鹿げている。キツネ狩りを楽しむ人がいるから禁止令を解く、というのは、速いスピードで運転するのが好きな人がいるから制限速度を上げる、と言っているようなものだ」

「(キツネ狩り以外に)すでに世界には山ほど問題があるのだから、それに集中するべきだ」。

 

5月末に行われたデモには2,000人が参加し、ロンドン中心部の繁華街から首相官邸のある通りまで練り歩き、メイ首相へ抗議の声をあげました。

「動物虐待にはどんな言い訳も通用しない」

「保守党をつまみ出し、禁止法を守ろう」。

 

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過半数が反対するキツネ狩り

キツネ狩りが2005年に禁止されてから2013年までの9年間に500人を超える違反者が検挙され、うち341人が有罪となっています。

禁止されてもなお陰でキツネ狩りを続けている人たちがいるわけですが、こういった違反者に対してこの法律が有効に機能していることがわかります。

 

イギリスはしばしば伝統を重んじる国であるといわれていますが、その一方で動物の権利保護については世界で最も早く取り組みを進めてきた人たちでもあります。

世界最初の動物保護法が作られたのもイギリスです。

 

実は2年前の2015年にも、デイヴィッド・キャメロン首相(当時)が党首であった保守党がこのキツネ狩り解禁を試みたことがありました。

しかし市民たちから猛烈な反対運動がおこり、保守党はこの解禁案の撤回に追い込まれています。

 

今年も来日公演をしたポール・マッカートニーは動物愛護活動家であり、また有名なヴェジタリアンでもあります。

ふだんあまり政治について直接的な発言をしないポールも、2015年にはこの件について保守党を名指しで批判しています。

 

いろいろな点で現在の保守党政権をイギリス人は支持しているが、私たちの多くはキツネ狩りが再び許可されることに反対するはずだ。

 

キツネ狩りは残酷でかつ不必要。

 

もしキツネ狩りが導入されたら、多くの市民たち、そして私自身を含めた動物を愛する人たちの支持を、保守党は失うことになるだろう。

 

最新の世論調査では、イギリスの有権者の67%がキツネ狩り禁止は継続されるべきだと考えている、という期待できる結果も出ているそうです。

 

 

 

Source:

Anti-fox hunting campaigners march telling Theresa May to keep the ban | Metro News

Voters are being turned off by Theresa May's fox hunting plans | The Independent 

Fox Hunting: A Message From Paul | PaulMcCartney.com