地球温暖化とホッキョクグマに迫る危機をあらためて学習しよう
北極海に浮かぶ氷(海氷)は、ホッキョクグマたちが狩りをし、休息し、また子育てをするために必要不可欠な場所です。
現在、北極海の19の場所でホッキョクグマの生息が確認されていますが、そのすべての場所で氷の量が減少してしまっている、という調査結果が発表されました。
【北極海の氷に起こっていること】
気候変動により北極海の気温・水温が上昇してしまった結果、春が今までよりも早く訪れ、また秋が長く続くという四季への影響が出ています。
つまり、海に浮かぶ氷が早く溶けてしまったり、なかなか凍らなかったりする状態になっているのです。
これは人間が化石燃料を燃やすことで発生する「温室効果ガス」が引き起こしている事象であることはよく知られています。
専門家たちは、北極海では、地球全体の温暖化と比べるとその2倍のスピードで温暖化が進んでいることを指摘しています。
また、地球温暖化によって溶け出した氷は、思わぬ形で地球温暖化をさらに加速させてしまうようです。
氷は太陽の光を跳ね返しますが、海水は太陽の熱を吸収してしまう性質があります。
北極の海氷が溶け出して海水になるということは、太陽の熱を吸収する海水が増加することになるため、地球温暖化に拍車がかかってしまうことになるのです。
【ホッキョクグマたちを取り巻く環境】
ホッキョクグマたちは生活時間のほとんどを海上に浮かぶ氷の上で費やします。
今回の調査では人工衛星からのデータを分析し、ホッキョクグマが生息する海面が氷で覆われている日数を調べました。
すると、10年間で7~19日の割合で氷で覆われる日数が減少していることが分かりました。
温かい時期には氷は溶けて減ってゆくため、ホッキョクグマは陸地に上がり、寒くなって再び海面が凍る時期が訪れるまで食糧なしで過ごします。
その間は体に蓄えた脂肪分を少しずつ消化しながら生き延びてゆきます。
今、この食糧なしで過ごさなくてはならない温かい時期がどんどん長くなっているのです。
ホッキョクグマの生存が氷の有無にかかっているという事実を考えると、地球温暖化は最大の問題であると研究者たちは記しています。
【ホッキョクグマのエサのとり方】
ホッキョクグマは、エサとなるアザラシよりも速く泳ぐことができません。
そのため通常は氷の上に穴を作ってその中で待ち伏せし、アザラシが海の中から上がってきたところを襲う、といった狩りをしています。
また、ときには氷の上を歩きまわり、その下を泳いでいるアザラシを嗅ぎ付け、氷を破って捕まえるというやり方もあるようです。
いずれの場合も、海面に氷が張っていないとホッキョクグマはエサを捕ることができないのです。
【エサだけではない ホッキョクグマへの影響】
オスとメスとの出会いも海氷の上で行われるため、氷が減るということはホッキョクグマの繁殖に大きな影響があります。
また氷のない期間が長くなるほど、ホッキョクグマは陸地を求めてどんどん遠くへ泳いで行かざるを得ません。
その結果、かつてホッキョクグマなどを見ることがなかったような場所にまで現れるようになったため、地元の人たちと出くわしてしまう、という問題も多く発生しています。
さらには、氷が減った分広くなった海をガスや石油を求めて船舶が動き回るようになり、これがホッキョクグマの生活をさらに脅かす原因になっているといわれています。
国際自然保護連合(IUCN)は、21世紀の半ばにはホッキョクグマの生息数は今の3分の1にまで減ってしまうだろう、と警告しています。