ハリケーン「フローレンス」で水中から救助された牛 去年「ハービー」で救助された牛といっしょに暮らす
2018年9月中旬、アメリカ東部を襲ったハリケーン「フローレンス」がノース・カロライナ州に上陸しました。
このニュースを耳にした動物救護団体のマイクさんとその同僚たちは、トラックに乗り込みニュージャージー州からはるばる現場に駆けつけました。
まず、3頭の犬を発見。どうやら見捨てられた様子で、震えていました。
マイクさんたちがトラックを近くに止めただけで、犬たちは喜んで近づいてきたそうです。
しかし、もっと難しい救助を待っている動物がいました。
【水の中に取り残された1頭の牛】
現地のキャロラインさんが、増え続ける水の中で牛がもがいているという情報をマイクさんたちに教えてくれたのです。
いっしょにボートに乗り、キャロラインさんの案内でその牛のいる場所へ水面を進んで行きました。
現場に着くと牛は複数いて、そのほとんどは牧場主の自宅の玄関に上がっていました。
そこにまでは水が上がってきていなかったため、この牛たちはかろうじて助かったのです。
しかし、1頭だけ水の中に入り込んでしまい出られなくなっている牛がいました。
何とか体を浮かせるので精いっぱいのようです。
マイクさんたちのボートはこの牛に近づき、手綱をつかみました。 そしてその手綱をボートに縛り付け、牛を誘導できるようにしました。
そこからマイクさんたちのトラックまではかなりの距離があったため、水中をゆっくりと時間をかけて進むしかありません。
途中でボートのエンジンが止まってしまうというトラブルがありましたが、水上スキーに乗った人が通りかかってなんとか移動を終えた、という幸運もあったそうです。
しかし、一番大変だったのは水中から牛を引き上げる作業でした。
【ニュージャージー州の保護施設へ】
ボートで誘導されたとはいえ、長い間水の中を歩き続けた牛はすでに疲れ切っていました。
近くにいた地元の人たちの手伝いもあって、ようやく水のない場所に引き上げ、そこからトラックの後ろの荷台に乗せることが出来ました。
このときには牛は自力では立ち上がることが出来ないくらい弱っていました。
マイクさんはこの牛のオーナーに電話をかけ事情を説明すると、もしその牛を助けてくれるのならうちに戻さなくてもいいと言ったそうです。
そこで、この牛をニュージャージー州の保護施設まで移送することになりました。
【「ハービー」で救助された牛といっしょに】
実はこの牛は、救助したときからあまり人になついていませんでした。
マイクさんは、これまで酪農場でほかの牛たちと一緒に家族のように暮らしていたところを無理やり引き離されたため、抵抗を感じているのだろう、と思いました。
救助され保護施設で暮らし始めてからは、少しずつ態度を軟化してきましたが、本当に心を開くのは人に対してではなく、動物同士だろうとマイクさんは考えました。
この保護施設にはベイブと言名付けられた別の牛がいました。 ベイブは2017年のハリケーン「ハービー」の際に救出された牛です。
まずはこの2頭が仲良く暮らしてくれることをマイクさんは願っています。
ベイブはすでにマイクさんになついているので、今回救助された牛もその様子を見てマイクさんに心を開いてくれることを期待しているのです。
そして何よりも、今回の救出を成功させるために力を貸してくれたすべての人たちに感謝したい、とマイクさんは語っています。