14,000㎞の旅に疲れ果て死亡したオオカミ「OR-54」の話

2020年初め、「OR-54」として知られているメスのオオカミがパートナーを探す長い旅の末、死亡しているのが発見されました。

 

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https://www.theguardian.com/environment/2020/feb/09/wolf-california-oregon-scientists-endangered-species

 

OR-54はもともとオレゴン州で育ったオオカミです。

 

幼いオオカミは通常、生後1年半から2年ほどは家族と一緒に暮らします。

 

その後、パートナーとなる相手を探し自分の縄張りを確保するために群れを離れ、1頭で旅に出ます。

 

OR-54は野生生物当局によって無線の首輪をつけられていたため、その足取りを追跡することができました。

 

2018年1月、OR-54は育った群れを離れ、パートナー探しに出発。

 

毎日平均20㎞歩き続け、2019年の秋にネバダ州に入りました。

 

途中、両親のいるオレゴンの群れに2回戻っていることも分かっています。

 

しかし2020年1月、OR-54は遺体で発見されました。

 

すでにカリフォルニア州に入っており、年齢は3歳になっていました。

 

カリフォルニア、ネバダオレゴンの3つの州を14,000㎞以上も移動した後に死亡したことになります。

 

 

 

アメリカでほぼ根絶されてしまったオオカミ

OR-54が発見されたのはカリフォルニア州南部でしたが、ここでオオカミが最後に確認されたのは1924年でした。

 

ほぼ100年ぶりということになります。

 

かつてオオカミは全米にたくさん生息していましたが、政府主導のオオカミ駆除対策が19世紀から20世紀にかけて行われたため、絶滅寸前に追い込まれました。

 

その後オオカミ保護活動が行われてきましたが、生息数はあまり回復しておらず、カリフォルニア州については2011年以降20頭のオオカミしか確認されていません。

 

さらにトランプ政権は全米各地でオオカミを保護対象から外すようを提案しています。

 

カリフォルニア州では州法によってオオカミが保護されていますが、オレゴン州など近隣の州にはそのような保護措置はありません。

 

カリフォルニアの群れで子供が成育中

カリフォルニア州で確認されている野生のオオカミの群れは二組のみですが、最近この群れの一つに新しい子供が産まれたことが確認され、注目されています。

 

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※こちらは2017年に撮影されたもの(https://www.theguardian.com/environment/2020/jul/27/california-wolf-pack-litter-pups-lassen

 

かつては父親となる大人のオスがいましたが、このオオカミは2019年6月以来目撃されていませんでした。

 

しかし新しいオスが群れに加わり、その後8頭の子供が誕生。

 

今では少なくとも14匹のオオカミが群れの中にいると見られています。

 

オオカミについて前向きではない情報ばかりが聞こえてくる中、この群れが少しずつ子孫を増やしているのはうれしいニュースです。

 

一方で、この群れで育っている子供たちもいずれは巣立ってゆき、それぞれが1頭だけでパートナー探しの旅に出るときがやってきます。

 

しかし生息数が少ないわけですから、パートナーとなる相手も簡単には見つかりません。

 

冒頭に紹介したOR-54のようにパートナーが見つからず、そのまま自分の群れや縄張りをつくることができないまま死んでしまうという可能性も決して低くないのです。

 

 

 

出典: