犬・猫の食肉市場 ベトナムやカンボジアではコロナ後さらに活発に
新型コロナウイルス感染症の発生以来、中国政府が野生動物の売買を禁止するなど世界的に動物市場が下火になってきたと思われていました。
しかしベトナムやカンボジアでは、コロナウイルスの発生後、犬や猫の食肉販売が逆に活発になってきていることが分かりました。
犬・猫の肉に「効能」あり?
彼らの中では犬や猫の肉には「温める力」があり、「インフルエンザウイルスを除去する」効能があると信じられているそうです。
これは単に一般の人たちの間に広まる迷信ではありません。
地元の医者まで犬や猫の肉は寒さから身を守ってくれる効果があり、手術を受けた場合は術後の回復を早めてくれるといって犬の肉を患者たちに食べさせたり、血流を増加させる効果があるといって出産後の女性に勧める場合もあるのです。
インドネシアでは犬の肉は呼吸器系の病気(主に喘息)を治すと広く信じられており、カンボジアでは犬の肉は「健康に良く、コロナウイルスを含む風邪やウイルス性の病気を追い払うのに役立つ」と信じられています。
しかし、これら3カ国での取引を調査してきたグループが発表した報告書によると、「医療上の利点を示す証拠は何もない」と結論づけられているのです。
犬や猫からは感染しないから「安全」
動物保護団体「フォー・ポーズ」によると、コロナウイルス発生前のベトナム、カンボジア、インドネシアでは、毎年約1,000万匹の犬や猫が食用として殺害されていました。
カンボジアでは、屋台1件で1日に少なくとも3頭分の犬の肉を販売しており、ある町では約300頭の犬が毎日殺されていると推計されています。
売り物の動物は迷子になったペットだったり、中には盗まれたペットが首輪をつけたまま売り飛ばされているものもいるのです。
カンボジアやベトナムの食肉業者たちの中には、世界保健機構(WHO)が「猫や犬の感染が人にうつったと証明できるものはない」という旨の発表をしているから安全だ、と言って売りつけている人もいます。
WHOがこのような発表をしたのは、動物からの感染を恐れた飼い主がペットを放棄してしまうという事態を防ぐためでしたが、東南アジアの動物市場では逆の効果を持ってしまったのです。
不衛生な食肉市場が生み出す疫病の可能性
ここで問題なのは、医療上の効果が認められないにもかかわらず犬や猫を殺害して食べるという、動物愛護の観点だけではありません。
動物を大量に檻に詰め込み不衛生な環境で飼育・殺害することは、危険な病気を引き起こす可能性を高めることになる、という別の大きな問題もあるのです。
今回のコロナパンデミックを引き起こした原因は、(今のところは)野生動物の売買をしている市場である可能性が高いといわれています。
その後中国では動物市場が禁止され始めてはいるものの、他のアジアの国々では今でも似たような市場が活発に動いている以上、別のパンデミックを引き起こしてしまう可能性もあると専門家たちは指摘しています。
多くの異なる動物たちをケージに入れているため、動物同士がお互いに攻撃しあうことになり、そこから感染リスク・汚染リスクが高まるという指摘もあります。
こうした不衛生な状態が新型コロナウイルスと似たような別の疫病発生のもとになってしまう恐れもあるのです。
「時限爆弾」と指摘する専門家も
中国では最近になって初めて犬を「家畜」ではなく「ペット」として分類するようになり、「犬食」という行為がようやく過去のものとなり始めたところでした。
しかし東南アジアでいまだに横行する食用目的の動物市場は、まるで「時限爆弾」であると指摘する専門家もいます。
時限爆弾のようにその効果が発動するまで時差があるため、今は何が起きているか分からないものの、実際に爆発してしまったらもう取り返しがつかない、という意味です。
まさに新型コロナウイルス感染症がそうであったことを考えると、動物愛護のためにも、また私たちの健康・安全のためにも、犬猫の動物市場が一日も早く全面的に禁止されることを願わずにはいられません。