英エリザベス女王 今後作られる服はフェイクファー(人工毛皮)を使用 毛皮禁止へ新たな一歩
イギリス女王エリザベス2世が暮らすバッキンガム宮殿は「今後新しい服が女王陛下のためにデザインされる場合、使われる毛皮はフェイクファー(人工毛皮)になります」と発表しました。
プライベートで着用する衣類だけでなく、公式なセレモニーに出席する際に身につけるコートなどでも人工毛皮が使われることになります。
なお、すでに所有している毛皮製品は今後も着用を続けるそうです。
ファーフリーへの世界的な動き
近年になってファッション業界では毛皮製品の製造・販売をやめる方向へ大きく動いてきました。
2017年にはイタリアのグッチが毛皮製品を発表しないことを表明。
2018年にはロンドン・ファッション・ウィークが大規模なファッションショーとしては初めて毛皮の使用を禁止しました。
2019年5月にはプラダも毛皮の使用を終了したと発表しています。
また10月にはアメリカのカリフォルニア州が毛皮製品の全面禁止を決定。
さらにアメリカの百貨店メイシーズは、毛皮製品の販売を2021年2月までに終了させると発表しています
イギリス人の95%が毛皮製品を着用しないという調査結果もあり、エリザベス女王の今回の動きは時代の反映だととらえられています。
毛皮製品の愛用者だった女王
エリザベス女王も若い頃はヒョウ柄のストールなどを着用しており、これらは本物の毛皮でつくられた王室御用達の特製ファッションでした。
近年でも女王は毛皮製品を身に着け続け、一部からは批判の的となっていました。
その一方で女王は、毛皮製品の製造過程が倫理的な基準を満たしているか、つねに高い関心を持ってきました。
例えば女王はアルパカの毛皮でできた帽子を愛用していますが、これは毛皮用に殺害したアルパカではなく、自然死したアルパカの毛皮を使って作られているものだそうです。
女王から国全体への広がりを期待
エリザベス女王の今回の動きが、これからどんどんと広がっていくことが大いに期待されています。
たとえばイギリスといえばこの「近衛兵」(Queen’s Guard)よく知られていますが、その有名な黒の帽子はクマの毛皮で作られています。
これだけの数の帽子が作られているわけですから、犠牲になったクマの数も相当なものでしょう。
すでにクマの毛皮に代わる質のいい人工毛皮は開発されているそうです。
今回の女王の影響が近衛兵の着用する帽子にも及ぶことが期待されています。
イギリスという国は、毛皮製品のために動物を飼育することを禁じた世界で初めての国です。
しかし現在でも毛皮を国外から輸入することは認められており、おもにフィンランド、ポーランド、中国などからイギリスに輸入されています。
将来的にはイギリスという国レベルで毛皮製品の全面禁止へ動くよう、期待されています。
毛皮でなくても長く使い続ける
毛皮を使わないというファッション業界の流れはどんどんと加速しており、今では毛皮製品を着用していることは時代に乗り遅れているという印象すら与えます。
その一方で、毛皮を使わないということはその分プラスチック製品の使用が増えることを意味します。
プラスチック製品は海洋汚染の原因として、また別の大きな問題を引き起こしているのはよく知られていることです。
毛皮製品の禁止に反対している人たちは、このプラスチック問題を悪化させないためにも毛皮製品をなくすべきではないと訴えています。
たしかに、毛皮製品が修復可能で長期間使用できることは事実です。
また高価であるため長年大切に使用される毛皮製品に対し、どちらかと言うと高価ではないプラスチック製品は使い捨てされてしまう傾向があります。
毛皮製品ではなくても長年愛用し続けることが大事であると言いうことを、私たち消費者は理解しておく必要があるでしょう。
出典:
・Queen follows fashion's lead in going fur-free | Fashion | The Guardian
・Queen will no longer wear clothes with real fur, Her Majesty's dresser reveals