プラスチックまみれの海に暮らすウミガメたち わずかプラスチック片一個の誤飲で致死率が2割高まる

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私たちの捨てたプラスチックごみが海に流れ着き、その結果多くの海洋動物たちが苦しんでいるという事態は、最近になってようやく注目されるようになってきました。

 

とくに輪っかの状態になっているプラスチックが体に絡みついてしまって、そのせいで体が変形してしまったり泳げなくなって溺れ死んでしまうという事例が多く発見されてきています。

 

一方、誤飲によってプラスチックを体内に取り込んでしまった動物たちが受ける影響については、なかなか見積もることが出来ませんでした。

 

このたび雑誌「Scientific Reports」に発表された最新の研究結果によると、たった一つのプラスチック片を飲み込んだだけでウミガメは命を落としてしまう可能性がある、ということが分かりました。

 

わずか1個のプラスチック片を飲み込むと死の確率が22%増加し、これが14個飲み込んだ場合は50%にまで確率が高まるということです。 また若いウミガメのほうが大人のウミガメよりもプラスチック誤飲が原因で死ぬリスクが高いことも判明しました。

 

長期的にみるとこの事態はウミガメたちの生息数や存続そのものに影響する、と学者たちは警告しています。

 

【半数がプラスチックを飲み込んでいる】

このたび発表された調査によると、地球上のウミガメの約半数が、すでにプラスチック片を飲み込んでいる、と推測されています。

 

とくにブラジル沖に暮らすアオウミガメの子供の場合、その90%がすでにプラスチック片を飲み込んでいると見られています。

 

プラスチック片の誤飲がウミガメにどのように影響するかを調査するにあたって、研究者たちは死体の解剖結果と海岸に打ち上げられた動物たちの記録を精査しました。

 

ここからプラスチックの誤飲がウミガメの死亡率に与える影響度合いをはじき出したところ、200個のプラスチック片を飲み込んでしまうと死はまぬかれない、という結果が出されました。

 

また14個を飲み込むと50%の致死率、わずか1個でも22%の致死率となります。

 

ウミガメはいったん飲み込んでしまうと、それを吐き出すことが出来ません。

 

飲み込んだプラスチック片が内臓の一部ををふさぐような場所に入ってしまうと、最終的には命を落とすことにつながってしまうのです。 たとえ飲み込んだものが小さなフィルムのようなものでも、この危険は十分にあります。

 

また内臓をふさいでしまうことがなくても、もし硬い破片を飲み込んだ場合は内臓を内側から傷つけることになり、やはり致命傷につながっていくのです。

 

【犠牲になる子供ウミガメ 将来の生息数に影響も】

子供のウミガメは大人に比べるとプラスチック片をより多く飲み込んでしまう傾向があることも判明しました。

 

プラスチックを飲み込んでしまうウミガメのうち、大人は16%だったのに対し、子供は23%、さらに卵から孵ったばかりの赤ちゃんウミガメは54%にのぼります。

 

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年齢の若いウミガメはまだ十分に泳ぐ力が備わっていないため、自力で深いところに潜ろうとせず海面に浮いて流れに身を任せて移動する習性があります。

 

プラスチックごみもまた、海面に浮いて流れに身を任せています。

 

そのため子供のウミガメのほうがプラスチック片を口にしてしまう確率が高くなってしまうのです。

 

リクガメほどではありませんが、ウミガメもやはり長生きする傾向にあり、平均寿命はだいたい80歳くらいです。

 

長生きしますので、大人になってからの時間が長く産卵する期間も数十年間に及びます。

 

しかしそれでも、ウミガメの子供たちの多くがプラスチック片を飲み込んでいる以上、生息数への悪影響は避けることが出来ません。

 

子供たちの内臓にプラスチック片が多く発見されているということは、交尾・産卵できる年齢になる前に死んでしまうウミガメが多いということになるのです。

 

この状態が続けばウミガメたちの生息数に長期的にどのような影響をもたらすかは、想像に難くありません。種類によっては存続が危ぶまれる可能性もあると見られています。

 

【ウミガメのことを思い出してみる】 

率直に言って、日本に暮らす多くの人にとって、ウミガメはあまり身近な動物とは言えません。

 

そのため、ふだん使っているプラスチック製品がウミガメにどんな影響を与えているか、あまり実感がわかないのも事実です。

 

しかしどんな環境破壊でも、その影響が目に見えてきたときにはすでに多くの犠牲が出ている場合が多く、このウミガメたちの例もその一つです。

 

日本はゴミの分別収集に積極的な国だと言われていますが、それでもプラスチックを使うときや捨てるときには数多くのウミガメが犠牲になっていることを少しでも思い出せるといいのではないか、と思います。

 

 

 

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