信号機の上で次々とヒナを育てるハトの話
トルコのイズミルという都市で、ある信号が注目の的になっています。
これは誰かのいたずらか、それとも前衛芸術家によるインスタレーション作品でしょうか。
そうではありません。
約1年ほど前、この信号機の上に一羽のハトが巣をつくりました。
かなり交通量の多い交差点の信号なので、必然的に多くの人たちの目に触れ、知れ渡っていきました。
獣医師のエルドガンさんもその一人で、遠くからハトが一生懸命巣をつくっている様子を眺めるのがとても楽しかったそうです。
【ほかの巣のヒナを育てる】
ある日、エルドガンさんはこの信号とは別のところにあるハトの巣から、生まれたばかりのハトのヒナが落ちてきたのを目撃しました。
しかしその巣は高いところにあり、エルドガンさんはハトのヒナをもとの巣に戻して上げることが出来なかったのです。
そのとき、例の信号の上にあるハトの巣のことを思い出しました。
エルドガンさんはそのヒナを信号の上の巣に載せてあげました。
もちろん、その巣を作っていたハトが面倒を見るかどうか、確信はなかったのです。
しかしそのハトはエルドガンさんが連れてきたヒナを我が子のように育て始めました。
そして独り立ちできるようになるまで面倒を見てあげたのです。
その後、また別の巣から落ちてしまったハトのヒナが発見されたときにも、やはりこの信号機の上の巣に運びあげました。
するとまた期待通り、ハトはこのヒナも育ててくれたのです。
「信号のハト」はこうしてさらにその知名度を広めていきました。
【これからは自分も母親に】
冒頭の写真の傘が設置されたのは、その後のことでした。
これはエルドガンさんがやったのではなく、彼の知らない間に誰かが取り付けてくれたそうです。
雨よりはむしろ強い日差しからハトを守ってあげたいという気持ちは、この交差点を通る多くの人たちが共有しているものだったのです。
この信号に設置された傘の話はトルコ国内に広く広まりました。
そして、さらに新しいニュースがありました。
つい最近エルドガンさんがこの巣をチェックしてみると、中に卵が入っていたのです。
(卵と自撮りするエルドガンさん)
今までエルドガンさんが拾ってきたヒナ2羽を親代わりに世話してくれたこのハトが、今度は自分がお母さんになり、新たに2羽を育てることになるのです。
ヒナが無事に生まれ、お母さんとともに元気に巣立ってくれることを日本からも祈りたいと思います。