今年のロンドン・ファッション・ウィークは「ファーフリー」で開催 一方で別の懸念も

f:id:georgekato:20180912112601j:plain

 

 

 

今年もロンドン・ファッション・ウィークが9月に開催されますが、今年はいつもと違う点が注目されています。

 

今回は登場するコレクションのすべてが「ファーフリー」(毛皮を使用していない)のものに限られている、ということです。

 

世界主要都市で行われるファッション・ウィークの中でもこの決定をしたのはロンドンが初めてです。

 

運営側が今回のショーに参加予定のデザイナーに確認した結果こうした決定に至ったようですが、同時に近年のロンドン・ファッション・ウィーク開催時に行われる毛皮反対の抗議運動がどんどん大きくなってきていることも、主催者として無視することが出来なかった模様です。

 

毛皮反対の抗議運動に参加した人数は、2016年のロンドン・ファッション・ウィークでは25人だったのが、2017年には250人以上に増えていたということです。

 

【近年のファッション業界に広まるファーフリー】

これは現在のファッション業界に広がっている傾向を反映した動きであると言えます。

 

最近ではバーバリーが新しいクリエイティヴ・ディレクターを迎えるにあたって、ファーフリーのポリシーを決定・発表しました。 現存の毛皮を使用したアイテムは徐々になくしていくということです。

 

2018年8月に行われたヘルシンキ・ファッション・ウィークでも、革製品の使用が禁止されました。

 

他にも最近ではグッチ、マイケル・コース、ヴェルサーチなどといった著名なファッションブランドが次々と動物を使った製品から距離を置き始めています。

 

またASOS.comもすでに毛皮製品を禁止していたのに加え、2018年6月からは羽毛、絹、カシミア、モヘアなどを使用した製品も禁止するポリシーに変更しました。

 

ロンドン・ファッション・ウィークのような世界中が注目するイベントでファーフリーが明言されれば、そのメッセージが広く多くの人たちに行き届くことが期待できます。

  

【「フェイクファー」がもたらす別の問題】

こうした前向きなニュースの一方、別のネガティブな側面も指摘されています。

 

本物の毛皮を使わない場合、いわゆる「フェイクファー」が代わりに使われることになるのです。

 

フェイクファーは石油製品がほとんどですので、毛皮などが使われなくなる分プラスチックやビニールなどの使用量が増えることになります。

 

プラスチック製品が海に流され、多くの海洋生物たちが苦しんでいるという事態は、最近になってようやく意識されるようになりました。

 

もちろん、フェイクファー製品を着ている人が服をそのまま海に投げ捨てるということではありません。

 

どのような形式で廃棄されても自然な形で土に帰っていくゆくことがないプラスチック製品は、やはり自然環境に悪影響を与え、そこで暮らす動物たちも悪影響を被る、という可能性があるのです。

 

また、動物を使った製品のほうがプラスチックなどの石油製品よりも長期間の使用に耐える、ということを指摘している人たちもいます。

 

つまり、動物製品を使うほうがゴミの量が減り、自然環境への負荷が少なくて済むというのがその理屈です。

 

こうした主張・考え方は、必ずしも人間中心の立場で一方的に動物殺害を奨励しているというわけではないと思います。

 

むしろ動物たちを含めた自然環境への理解や配慮も含まれている意見のようですので、私たち動物愛護の立場と真っ向から対立するとは言えないかも知れません。

 

【結局は一人ひとりの意識の問題】

ロンドン・ファッション・ウィークの主催者は「結局はデザイナーと消費者の選択に任されなくてはいけない」と述べています。

 

これは聞きようによっては投げやりで無責任に響く言葉かも知れません。

 

しかし、どんなに影響力の強い組織が呼び掛けても、やはり最終的には私たち一人ひとりが意識を持たないと本当の変化は訪れない、という意味だと私は思います。

 

どんな製品を手に入れる場合でも、それが自然とそこに暮らす動物たちに何らかの影響を与える ― ということを(ときどきでもいいので)思い出すことが、私たちのできる第一歩になるでしょう。

 

 

 

(出典)

London fashion week vows to be fur-free | Fashion | The Guardian